『キングダム』昌平君、徹夜で仕立てた軍略の相手は全て李牧? 秦国の軍司令を追い込んだ“無茶振り”3選

※本稿は漫画『キングダム』のネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。

 武力により中華を統一し、戦のない世の中を作るという夢を掲げている秦王・嬴政(えいせい)と、天下の大将軍を目指す李信の活躍を描いた、人気漫画『キングダム』(原泰久)。敵国からの侵攻や敗戦など、幾度となく苦境に立たされてきたが、それらを解決する術を探したのは、丞相の昌文君と昌平君だ。特に、普段身なりを整えた昌平君が、髭も髪も乱れた状況に追い込まれるほどの“無茶振り”といえるエピソードを3つ紹介したい。

 昌平君は現在秦国の軍最高司令官であると共に、国のNo.2である右丞相の地位を得たエリート。元々は嬴政と敵対関係にあった呂不韋陣営の四柱の一人であったが、昌平君自身も考えていた中華統一を成すため嬴政陣営へと移った。戴冠の儀に呂不韋に放った「世話になった」というセリフは、昌平君を語る上で外せない一幕と言ってもいいだろう。

 そんな昌平君は過去に立てた中華統一の戦略を基に、列国を滅ぼすための指揮を一手に担っているため、そもそも膨大な仕事量を持っている。さらに国内最強の策略家でもあるゆえ、誰よりも頭を悩ましている描写が度々描かれていた。

五国の合従軍からの「秦国防衛戦」

 1つ目は合従軍からの秦国防衛戦。秦を含む中華七国のうち、斉を除いた五国(趙・魏・韓・楚・嚥)が合従軍となって秦王都・邯鄲へ侵攻してきたのだ。李牧の邯鄲来朝からわずかの間に合従軍を編成したため、出し抜かれた形となった昌平君は何一つ準備ができていなかった。

 しかし、報告を受けてすぐに斉へ外交官である蔡沢を送るよう昌平君は指示を出す手腕と冷静さには、さすがと言わざるをえない。その後戦場へと場面転換していくが、シーンが戻ると盤面を囲んで倒れる文官たちが現れた。嬴政が玉座で眠りについていることから、王の間にてぶっ通しの軍議が行われていたのだろう。服や髪は乱れ、深いクマができ、無精髭が生えた昌平君はこの時、作中で初めて登場したのだ。

 軍議の結果、導き出された戦略は100戦20勝80敗と勝率20%。秦全ての戦力を集めた戦いは、麃公(ひょうこう)という大将軍を失うも、楚・韓の第一将を討ち取り、合従軍を撤退させてみせた。さらに勝報を受けても喜びに浸らず、蒙武らに掃討戦を指示する徹底ぶりには、驚かされるところだ。

中華統一までのショートカットを狙った「鄴攻め」

 続いては、コミック46巻で趙攻略のための作戦として挙げられた鄴攻め。元々は趙西部から侵攻する予定であったが、趙の軍師・李牧が防衛線を引いたことで攻略に10年の歳月がかかることが判明してしまった。

 そのため昌平君は、西部に向かうふりをして南部から趙へ侵攻する最難関の道を、自ら選んだのだ。情報漏洩を防ぐために密室の中、わずか4名で寝る間も惜しんで開かれ続けた軍議では、皆が今にも卒倒しそうな表情が描かれている。

 李牧に鄴攻めを悟られぬよう、短期間かつ少人数の意見で策を練るのは相当の疲労があったことだろう。実際、高齢に差し掛かった昌文君は、立ってられず膝をつく一幕があった。

 そこまでして作り上げた軍略だったが、李牧の即座の対応により早々に実行不可能となってしまうという悲しい結果となってしまったのは言うまでもない。現場判断に任せっきりとなり、申し訳なさと不安を浮かべる昌平君は見るに耐えなかった読者も多かったのではないだろうか。

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