サンリオ、絶好調 10年ぶりに過去最高益となった理由は? ファン歴20年の識者が語る、3つのポイント

過去最高益のサンリオ、好調の理由は?

  サンリオが2024年3月期に、前年同期と比較して売上高46%増、営業益150%増で10期ぶりに過去最高益を更新した。

 この好調ぶりについて、各メディアは物販事業の成功や、デジタル戦略における成功などを挙げているが、具体的にどのように成功しているのか。20年来のサンリオファン目線で3つのポイント共に解説したい。

1.ライセンス事業の多様化

 サンリオのビジネスモデルとして、1つ大きな軸となっているのはライセンスビジネスである。ライセンスビジネスとは、簡単に言うならば企業や商品とのコラボレーションのこと。サンリオは、このライセンス事業が前年同期比で39.0%をマークするほどに好調なのだ。

 一時期、「ハローキティ(以下、キティ)は仕事を選ばない」と言う意味の言葉がSNS上などで生まれたほど。それくらい、キティはサンリオの“顔”として、各コラボレーションを盛んに行ってきたキャラクターだ。

 しかし、近年、この傾向が変わってきている。サンリオコラボといえばキティというイメージから一変、キティ以外のキャラクターも各社とコラボする機会が増えているのだ。

 この理由はなぜか、2020年にCO2排出ゼロの自然に優しい電力を供給するシナネン株式会社とシナモロール(以下、シナモン)が手を組んでコラボを発表した際に「白や水色を基調とした色合いから、シナモンはサンリオキャラクターの中でも清潔感がありクリーンなキャラクターです。そんなクリーンなイメージのあるシナモンと、クリーンなエネルギーを作っているシナネンさまとの相性がよいと感じたため、今回はシナモンをご採用いただきました」と回答している。(※1)

 このように、近年、各企業は自身の打ち出したいイメージとあったキャラクターとのコラボをするように。

 キャラクターをまるで芸能事務所のタレントのように扱い、事務所(サンリオ)全体として、より適切なキャラクターを提案することになった影響で、コラボ相手の間口が広がり、もしもキティとのコラボが競合他社とかぶってしまった際にも、別のキャラクターでコラボするという可能性が増えたように感じている。

 一方で「サンリオピューロランド」に目を向けると3月1日、公式サイトにて16のキャラクターがサンリオピューロランドから“おでかけ”(サンリオピューロランドで常に会えるキャラクターではなくなることを意味する)されることが発表。3月31日をもってKIRIMIちゃんや、しゃきぴよ、ぎゅでちゃま、チャーミーキティ、リトルフォレストフェロォ、品川紋次郎、かぷえもん、しふぉ丸、りっぷ、ひまわり、ローズ、すみれ、りん、スピカ、メンタくん。ピンキーリルローズ&リオスカイピースの16のキャラクターのキャラクターページの公開が終了するといった、少々ショッキングな出来事も起きた。

 そう考えると、450を超えるキャラクターを抱えているがゆえに、人気が高く利益を生み出すキャラクターに注力していくようなシビアな側面もあるように思える。年に1度のサンリオキャラクター大賞は、その指標となっている印象だ。

 しかし、“おでかけ”はあくまで“おでかけ”だ。

 実際、「ハッピーになりたい男子たち、V字回復をねらう」と結成されたポチャッコやハンギョドンらによるはぴだんぶいは数年の時を経て、今や6キャラクター全員がサンリオキャラクター大賞で20位以内に入ると言う人気っぷり。

 平成時代に一世風靡したコロコロクリリンやウサハナなどのキャラクターグッズも年に数回のペースで、リバイバルされている。

 決して永遠の別れではないと言うことを胸に、ぜひ推しキャラクターが、サンリオキャラクター大賞にノミネートした際は応援投票をすることをおすすめしたい。

2.ファン層の広がりとインバウンドの影響

 サンリオが運営するショップ「サンリオギフトゲート」に足を運ぶと、その顧客層の幅広さに驚く。

 一時期は、サンリオキャラクター=子どものためのもの、女性が好きなものというイメージも強かったのは事実。しかし、近年は老若男女問わず、毎週水曜日の新作発売日にショップが賑わっている印象だ。

 これは考察にすぎないが、現在の20〜30代は男女問わずキャラクターへの抵抗感がぐっと下がっている印象。ちょうどポケットモンスターやたまごっちといった、長きにわたって愛されるキャラクターやアニメーションが幼少期に生まれたからだろうか。年々「大人なのに、キャラクターグッズを持っているの?」と聞かれることは減っているどころか、スマートフォンケースなど身近なアイテムにキャラクターがデザインされたものを使用している印象だ。

 実際、サンリオキャラクターに会えるテーマパークの1つ東京・多摩市にある「サンリオピューロランド」に足を運ぶと、女性や子どもだけでなく、多くの人がキャラクターの耳がデザインされたカチューシャを装着しているのを目にする。特にかわいらしさとかっこよさを兼ね備えているシナモロールとクロミは、長期休暇中になるとカチューシャが品切れになることもあるほどの人気ぶりだ。

 そして、もう1つ「サンリオギフトゲート」に足を運ぶたびに感じる、コロナ禍を挟んで起きた大きな変化がある。それは、訪日外国人の多さだ。

 実は、韓国や台湾などには、サンリオの常設カフェやショップがあるほど、今アジア圏でサンリオが熱い。(※2)

 付け加えるなら、ドジャーズの試合でキティが始球式を務め話題になったように、欧米圏でもサンリオ人気は止まらない。(※3)

 そのような理由や、デジタルコンテンツの拡充なども影響し、コロナ禍を経て海外から日本を訪れる人の中には、サンリオが生まれた総本山である日本のサンリオ関連施設を訪れる人が増加している。

 実際「サンリオギフトゲート」では、顧客の殺到もあってか、ここ1〜2年で新たに設けられたルールがある。それは、新作商品の発売から1週間は、購入個数の制限が設けられるようになったということだ。

 そのような施策をしてもなお、物販事業の売上高が前年同期比で19.2%増加したのだからすごい。単純にサンリオファンの母数が増えたと言えるだろう。

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