『24時間テレビ』と手塚治虫の関係ーー“世界初”の試みで生まれた名作アニメといえば?
■24時間テレビは手塚アニメが名物だった
毎年恒例となっている日本テレビの『24時間テレビ 「愛は地球を救う」』が放送されている。番組内でもっとも注目度が高い企画と言えばチャリティーマラソンだろう。今年はお笑い芸人のやす子が走者となることで話題になっている。また、ドラマスペシャルも注目が高い。今年は伊藤淳史が主演で『欽ちゃんのスミちゃん 〜萩本欽一を愛した女性〜』が放送される。
そんな24時間テレビだが、1978年放送の初回から1990年の第13回にかけて、アニメスペシャルと題し、約2時間のオリジナルのアニメが放送されていたのをご存じだろうか。しかも、1982年の『アンドロメダ・ストーリーズ』、1990年の『それいけ!アンパンマン みなみの海をすくえ!』を除き、毎回手塚治虫が原作のアニメが放送されていたのである。
手塚原作のアニメは合計9作品が制作され、『100万年地球の旅 バンダーブック』『海底超特急マリンエクスプレス』『フウムーン』『ブレーメン4 地獄の中の天使たち』『タイムスリップ10000年プライム・ローズ』『大自然の魔獣バギ』『悪魔島のプリンス三つ目がとおる』『銀河探査2100年 ボーダープラネット』『手塚治虫物語 ぼくは孫悟空』など、ジャンルもSFを中心に多岐にわたっている。
特に、『100万年地球の旅 バンダーブック』は日本初にして世界初の2時間テレビアニメであり、“日本初”が何かと大好きな手塚治虫が勢力を傾けた名作である。さらに、虫プロダクションの倒産を機に一度はアニメから撤退した手塚が、本格的にアニメ制作を再開するきっかけになった重要な作品とされている。
■放送ギリギリまで制作が続いた。
さて、『100万年地球の旅 バンダーブック』に対する手塚治虫の思い入れは相当なものだった。絵コンテも自ら描いたほか、何度も何度もリテイクを繰り返して完成度を高めようとした。しかし、現場は多忙を極めた。デスクが失踪したうえ、手塚がなかなか担当するカットをあげてこないため、放送直前ギリギリまで制作が進められていたことでも有名だ。
しかし、作り込んだ甲斐もあって、『24時間テレビ』内で放送された番組では最高となる約28%の視聴率を記録している。だが、手塚はそれでも仕上がりに満足せず、放送後、ビデオ化の計画がまだなかったにも関わらず修正が行われた。様々な意味で伝説の作品といえる。
その時のエピソードは『ブラック・ジャック創作秘話〜手塚治虫の仕事場から〜』(宮崎克/原作、吉本浩二/作画、秋田書店/刊)に収録されているのでぜひ読んでほしい。とにかく手塚はアニメ制作を行いながらも何本もの漫画の連載も並行して行っていたわけで、その超人的なスケジュールにはただただ圧倒されるしかない。『24時間テレビ』を視聴する際は、ぜひ手塚の業績にも思いを馳せてみてはいかがだろうか。