『ハイキュー!!』は“非天才=凡人”の物語? 多くの読者に刺さった熱いセリフ3選
運動部を経験した全ての人に贈る言葉とは
最後に紹介したいのは第5巻に登場するセリフ「俺たちもやったよ。バレーボール、やってたよ」だ。
筆者はこのシーンを目の当たりにして、この作品は自分にとってかけがえのない作品になることを確信した。それ程に心の芯に刺さる言葉だった。
夏のインターハイ宮城県予選で烏野高校が1回戦で対峙した常波高校はいわゆる弱小で、1回戦を突破できるかどうかといったレベルのチームだ。主将の池尻は烏野の主将、澤村大地の中学時代のチームメイトだった。烏野の気迫に押されつつも負けじと意気込んで試合に挑む池尻だが、やはり力の差は大きくセットカウント2-0で敗退してしまう。
あっけなく3年間の部活動が終わった瞬間、悔しさと少なからずの後悔、辛い練習の中でも時折感じた楽しかった時間など、めくるめく感情が押し寄せてくる。
物語は残酷で、誰もが主人公になることはできない。とりわけ勝敗がはっきりと別れる競技は否が応にも自身が脇役であることを突きつけてくる。そして最後まで勝ち続けられる人間はほぼいない。
それでも、ほとんど誰の記憶にも残らなかったとしても。
「俺たちもやったよ。バレーボール、やってたよ」
このセリフが、どれだけの志半ばで敗れた元バレーボーラーの気持ちを代弁してくれたことだろうか。いや、バレーボールに限らず全ての競技における部活動経験者の気持ちといっても過言ではないだろう。
勝者だけでなく、敗者にもスポットを当ててその思いを拾ってくれる。それこそが『ハイキュー!!』という作品の揺るぎない魅力なのではないだろうか。
魂を揺さぶられるようなセリフに込められたその意味を想像しながら、ぜひ本作を楽しんでほしい。