たま・石川浩司「たま現象」を回想 「どこに行っても場違い(笑)。自分たちでもジャンルがわからない」 

たま・石川浩司「たま現象」を回想

不器用は武器になる

ーー先ほど三上寛さんなどを挙げてらっしゃいましたが洋楽はどんなものを聴いてこられたんでしょう?

石川:すごく一般的なんですけどビートルズから入って。だんだん聴いていくとビートルズの後期って、すごい売れてるのに実験的なこととかアングラ性の高いことをやっててすごく面白いなと思って。高校生になってからはプログレ系。キング・クリムゾンとかイエスとかピンク・フロイドとか聴くようになった。日本では三上寛さん遠藤賢司さんとか、あがた森魚さんとか。高校時代は群馬に住んでたんですけど、普通に暮らしてると普通にメジャーの漫画とか音楽しか入ってこないんですよ。それで深夜ラジオにハマって。昼間TVじゃ流さないものが刺激的でハマってった。

  僕はTBSパック・イン・ミュージック派で好きなDJは野沢那智さん、愛川欽也さん。かまやつひろしさんが何かのCMソングを、歌詞は決まってるけど毎回即興で歌っていて、即興で曲を作るのは面白いなというのは、かまやつさんに教わった。僕は基本はフォークよりロック系だったんですけど、子供の頃から手先が不器用で。あと理科が苦手だったんです。ロックは最低限の電気知識がないとアンプ使ったりできない。そこから無理。フォークなら生ギターでそのまま音が出るしマイクなくても歌えるし。

ーー思いがけないところにハードルがあったんですね。でもそれが逆に功を奏して個性になっていく。

石川:そうなんです。できない部分が多かった。未だにFコードが抑えられない。でもできないことを、逆にどうするかみたいなことは姑息に考えてます(笑)。子供の頃は転校が多くて、いじめられっ子だったんですけど、くだらないバカバカしいことをやってたら受け入れられて、友達も増えたから。不器用を隠すんじゃなくて、逆にオーバーアクションにしたら受け入れられた。これは「不器用は武器になるぞ」と。ひとって、マイナスの部分がどうしてもきになっちゃうけど、それは単にここが凹んでるということ、ということはどこかが突起になってる部分がある。それを見つけられるかどうかですね。それが役に立つかわからないですけど。

ーー石川さんのそういう面が「たま」の中でも重要だった気がします。「さよなら人類」で大成功を収めましたが、「たま」は冷静にそのチャンスを有効に生かして活動していたのではと思います。

石川:その頃は、メンバー内で確認じゃないですけど、何かちょっとでも「もっと売れるためにこうしよう」みたいなことを誰かが言ったら、残りの3人の目が「おめえはそういうヤツなんだな」ってキツくなってた。そう見られたくないから、自分のすべきことをやってた感じですね。あの1回がラッキーだっただけで、自分のやるべきことをやろう、というのは確認しあっていました。だから解散して21年ですけど、いまだに全員現役でやっている。好きなことを続けてなければ、違う仕事とかしてたかも。

解散はしてるけど、あんまり終わった感がない

ーーYouTubeに、つい最近の石川さん知久さん滝本さんのライヴ映像がありました。時々一緒に活動されているようですね。

石川:ああ、ついこないだのね。「今から、ないバンドの曲をやります」って、たま時代の曲を(笑)。決して喧嘩してやめたわけじゃなくて、いろんな他のバンドとかをやってたから。本にも書いたけど、「たま」を解散した3日か4日後に僕はパスカルズのヨーロッパ・ツアーで忙しかったから、解散を悲しんでる暇がなかった。次にやりたいことが、次々にあって、今に至っています。

ーー先日ライブハウスでの弾き語りを拝見しましたが、その時も歌っていた「ラザニア」「玄関」の歌詞も著書の中に載っていますね。「ラザニア」では多様性の時代を暖かく歌い、「玄関」は会えなくなった人との惜別の想いを感情豊かに歌っていらっしゃいました。こうした曲を伝えたいというのも、執筆される原動力の一つなのではと思いますが。

石川:この2曲とも解散した後に書いた曲です。やっぱり年をとると死ぬこととか身近にというか現実感があるので、ああいう歌が自然に出てくるというか。ソロの歌に関しては歌詞が重要なんで、海外の人には伝わりにくいと思っていたんですが、前にタイで歌ったら日本語わからない現地の人がワンワン泣き出して、「なんか言ってることがわかった」って。あれにはびっくりしたし、ほんと嬉しかった。

ーー「たま」という船は、石川さんにとって乗り心地は良かったのかなと思いますが。

石川:それはいろいろありましたね。でも基本的に友達から発生してるから、仲は良かったですね。ツアーとか行ってライヴ終わった後もメンバーだけで飲みに行ったり雀荘に行ったり(笑)。ついつい朝になって寝るのは移動のバスの中。若かったからできたんですけどね。今でも、先々週はパスカルズで知久くんと一緒だったし、今度の土曜は滝本くんの家に行って配信ライブがあるし。解散はしてるけど、あんまり終わった感がない。もちろん「たま」をやってた時はライブがなくてもレコーディングや何やかやで毎日のようにあってたから、今は会う頻度は減ってますけど。これからも変わらないんじゃないかな。

■書籍情報
『「たま」という船に乗っていた 増補改訂版』
著者:石川浩司
価格:1870円
発売日:2023年3月23日
出版社:双葉社

『「たま」という船に乗っていた さよなら人類編』
著者:石川浩司/原田高夕己
価格:1430円
発売日:2022年7月21日
出版社:双葉社

『「たま」という船に乗っていた らんちう編』
著者:石川浩司/原田高夕己
価格:1650円
発売日:2024年5月22日
出版社:双葉社

石川浩司さんのサイン入りチェキを1名様にプレゼント!

石川浩司さんのサイン入りチェキを抽選で1名様にプレゼントいたします。

【応募方法】
リアルサウンドブックの公式X(旧Twitter)フォロー&該当ポストをリポスト/リアルサウンドブック公式Instagramをフォロー&投稿をいいね&コメントいただいた方の中から抽選でプレゼントいたします。
当選者の方には、リアルサウンドブックの公式Xまたはリアルサウンドブック公式InstagramアカウントよりDMをお送りいたします。
※当選後、住所の送付が可能な方のみご応募ください。個人情報につきましては、プレゼントの発送以外には使用いたしません。
※同一の方による複数アカウントからのお申し込みが発覚した場合、ご応募は無効とさせていただく場合がございます。(XとInstagramについては重複とみなさず、それぞれご応募を承ります)
※営利目的の転売は固くお断りいたします。

リアルサウンドブック 公式X(旧Twitter):https://twitter.com/realsound_b
リアルサウンドブック 公式Instagram:https://www.instagram.com/realsound_b/
(※Instagram上で、上記URL以外の「リアルサウンド」を名乗るアカウントには十分にご注意ください)

<応募締切> 2024年7月16日(火)23:59まで

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「著者」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる