サッカー漫画、人気キャラだけでU-23日本代表チームを作ったら? フォワード・ミッドフィルダー編
4年に1度のスポーツの祭典、夏季オリンピックが来月開幕する。
日本のプロスポーツリーグで最も経済規模の大きい野球は今回、種目から除外されたが、2番目に経済規模の大きいサッカーは今回も種目に名前を連ねている。FIFAワールドカップとの兼ね合いで、オリンピックのサッカーは参加国数が三分の一(ワールドカップは48か国、オリンピックは16か国)、オーバーエイジ枠はあるものの基本は23歳以下のみ出場可能で、実質的には年代別代表戦のようなレギュレーションである。
加えて、オリンピックはFIFAの定める国際マッチデー期間外の大会のため、所属クラブに選手派遣の義務が無い。どれだけいいメンバーを揃えられるかは、各国のサッカー協会、クラブの対応次第のためオリンピック代表メンバーの質は真の意味でU-23代表と言えるかも微妙なところである。
前回の東京オリンピックは最終的にブラジルとスペインが決勝を戦い、ブラジルが優勝した。ブラジル代表はドウグラス・ルイス、ブルーノ・ギマランイス、リシャルリソン、スペイン代表はウナイ・シモン、エリック・ガルシア、パウ・トーレス、マルコ・アセンシオ、ミケル・オヤルサバル、ダニ・オルモなどA代表デビュー済みの選手がメンバーに名前を連ねており、良いメンバーを揃えることができたチームが優勝を争う順当な結果になった。
対称的に、ブラジル、スペインと同じく世界的な強豪国のはずのフランスはグループステージで早々に敗退したが、メンバーを見ればこれも納得の結果である。世代を代表する大物のはずのキリアン・エムバペ、ウスマン・デンベレなどはことごとく不参加で、3枠しかないオーバーエージの一枠が当時メキシコでプレーしていたベテランストライカー(大会当時35歳)のアンドレ=ピエール・ジニャックだった。2016年を最後にA代表に招集されていない、明らかに盛りを過ぎた選手である。これでは敗退も当然だろう。
フランスは開催国だが今回はどのような対応をするのだろうか? 記事執筆時点で発表されている候補メンバーにはA代表デビュー済みのワレン・ザイール=エムリ(パリ・サンジェルマン)、ブラッドリー・バルコラ(パリ・サンジェルマン)が名前を連ねているが、オーバーエイジ枠にエムバペをはじめとするA代表の主力級の名前はない。
フランスのクラブは今回協力的なようだが、フランス代表の主力級は国外クラブでプレーしている選手も多く、それが交渉を難しくしているようだ。最終的なメンバーは7/3まで決めることになっているとのことだが、フランスはギリギリまでクラブとの交渉は進めるつもりのようである。最終的にどのような顔ぶれになるのか、筆者のみならずサッカーファンなら気になるところだろう。
我が国の代表はバルセロナオリンピックでの予選敗退を最後に、毎回オリンピック出場権を獲得し続けている。バルセロナオリンピックの予選当時、まだ国内プロリーグ(Jリーグ)は開幕していなかった。Jリーグ開幕以降、毎回出場権を確保しているのは偶然ではないだろう。今回、U-23世代最大の大物であろう久保建英(レアル・ソシエダ)を招集できなかったのは残念だが、日本代表がどのような戦いを見せてくれるのか楽しみである。
さて、サッカーは世界的なメジャースポーツであり、わが国でも人気があるため、日本を代表するポップカルチャー・漫画でも頻繁に題材になる。サッカーの華はやはり得点なので、得点に絡むことが多いポジションの選手が主人公の場合が多い。登場人物のほとんどがFW(フォワード)を本職としている『ブルーロック』など極端な例だろう。
また、サッカーに限らず日本の漫画、特に少年誌は成人もしていない若いキャラクターが主人公の場合が多い。オリンピックの代表は前述のとおり、基本的には23歳以下なので、メンバーを組むならサッカー漫画の主人公は相性がいいのではないだろう?
今回は「サッカー漫画の主人公だけでU-23チームを作ったらどうなるか?」を考えてみることにしよう。
※日本代表は3バックと4バックを併用しているが、今回は4-2-3-1フォーメーションを前提にメンバーを組んでいる。
■FW(フォワード)、MF(ミッドフィルダー)編
通例であれば、フィールドの後方、GK(ゴールキーパー)から順に紹介するが、今回は攻撃的なポジションから先に選考する。勘のいい方はお分かりだと思うが、サッカー漫画の主人公は攻撃的なポジションにメンバーが大きく偏っている。調べたのだが、SB(サイドバック)の主人公は二人、CB(センターバック)の主人公は三人しかいなかった。3バックをやるにしても、4バックをやるにしても人数がギリギリのため、本来は攻撃的なポジションの選手でも複数ポジションができる選手はディフェンシブなポジションに回したい。
現代サッカーにおいて、複数ポジションができる選手は特に珍しくなく、現役日本代表メンバーでは旗手怜央(セルティック)が攻撃的なポジションと守備的なポジションの両方をこなすことができる。最近の本格的なサッカー漫画はそういった現代サッカーの事情を取り込んでいるため、複数ポジションができる主人公ももちろん存在する。
前置きが長くなった。筆者が独断で選考したメンバーの名前を挙げて行こう。
CF(センターフォワード):『VIVA! CALCIO』椎名曜 16歳(フィオレンティーナ入団時。2年目にスクデッド獲得)
RSH(右サイドハーフ):『ファンタジスタ』坂本轍平 20代前半(ACミラン、アーセナル在籍時)
OH(オフェンシブハーフ、トップ下):『キャプテン翼』大空翼 20歳(バルセロナ移籍時)
LSH(左サイドハーフ):『シュート!』田仲俊彦 (高校在学中にスペイン2部でデビュー のちにレアル・マドリード、A代表でもプレー)
■控え
『BE BLUES!〜青になれ〜』一条龍 18歳(ドイツでのプロデビュー時)
『エリアの騎士』逢沢駆 (オリンピック代表、のちにA代表でもプレー)
『ブルーロック』潔世一 高校二年生
明確な年齢描写がされていない場合もあるため、書き方が曖昧になってしまったところがあるが、全員日本人で、U-23であることは間違いない。
『ファンタジスタ』の主人公、坂本轍平(てっぺい)は個人技で状況を打開して得点を決める点取り屋になれるが、基本はゲームメイクをして味方を使うタイプの選手。圧倒的な個人技と視野の広さを誇るまさにファンタジスタである。名門ACミランのプリマヴェーラ(育成組織)から10代でトップチームデビューを果たしており、その後アーセナル、レアル・マドリードとヨーロッパのビッググラブを転々とした経歴の掛け値なしのエリートプレーヤーである。ユーティリティープレーヤーであり、劇中ではワントップのCF(センタフォーワード)、セカンドトップ、トップ下、右サイドハーフ、左ウィングバックと複数ポジションをこなしていた。3バックの3-4-2-1で行く場合は左ウィングバックにもまわせる。
劇中でオリンピックの代表にも選出されて、金メダル獲得に貢献しており企画の趣旨にもピッタリだ。天真爛漫なムードメーカータイプでプレー以外でも存在はプラスに作用することだろう。
『シュート!』の田仲俊彦(トシ)は少年漫画の主人公キャラ定番の強力な個人技を持ったストライカータイプの選手だ。相手の視界から消えるファントムドリブル、左右両足から放つ強烈なシュートは相手にとって脅威以外何物でもないだろう。てっぺいと同じく、10代でヨーロッパでプロデビューし、のちに世界的な名門レアル・マドリードでも主力として活躍する掛け値なしにワールドクラスのエリートプレーヤーだ。トシの本職はCFだが、CF候補が多すぎるため、一応、試合でも左ウィングをやっていたことからここでは左サイドハーフに回ってもらう。
トップ下は我らが10番・大空翼だ。ゴールキーパーを吹き飛ばしゴールネットを突き破るシュート力、ゴールキーパーの背後までカバーする広大なカバーエリアはもはや人間ではない。いるだけで相手チームの脅威だろう。このチームはディフェンスが手薄だが翼がいればある程度カバーできるかもしれない。
候補が山ほどいるCFはキャリアから考えてとりあえず、椎名曜(シーナ)でいいだろう。相手DFを置き去りにするアジリティ、スピードに乗ったドリブル、フェイントで相手を引きはがず個人技を持ち決定力も高い。プレースキックの名手で、ルイ・コスタが出場できなくなったゲームでは代役として中盤のボール配給役もこなしたテクニシャンで、守備もサボらない。相次ぐスキャンダルで相対的地位が低下してしまったが、シーナが活躍した時代のセリアAはおそらく世界最高のプロリーグで、彼もまた掛け値なしにワールドクラスの選手である。
控えからは逢沢駆もCF候補だ。このチームは使われるタイプより使うタイプの選手が多く、オフ・ザ・ボールの動きでボールを引き出してフィニッシュする「使われる」タイプの駆はゲームメイクができるてっぺい、翼、シーナと相性が良さそうである。いい位置でボールを受ければ、あとは多少不利な状況でも強引に個人技で突破してフィニッシュできる。敢えて現実の日本代表選手に例えるなら駆は古橋亨梧(セルティック)の強化版と言ったところだろうか。劇中でオリンピックの代表にも選出されており企画の趣旨にもピッタリだ。
怪我から復帰した直後の一条龍もおなじく使われるタイプのFWだったので彼も選択肢に入る。龍はリベロで出場したことがあるのでディフェンシブなポジションに回す選択肢もある。
潔世一は本職はFWだが、明らかに使う側のタイプのプレーヤーで適正ポジションはFWよりも攻撃的MFだろう。劇中ではダイレクトシュート以外、個人技に特筆する点が無かったが、フィジカルは進化、ダイレクトシュートも両足から放てるようになり、個人レベルでも明らかに進化している。展開によっては起用もありだろう。他にもFW、攻撃的MFが主人公の漫画はあるが、数が多すぎるので割愛する。次回はディフェンス編を紹介していきたい。