「社内声優」社長が重要キャラを担当した人気作品も……80~90年代のゲーム発展期に行われた“重要文化”

■社内声優で有名なゲーム会社と言えば?

鳩野高嗣氏の公式Xより@t_8100_14

 ゲーム制作者の鳩野高嗣が、X上で“社内声優”について語ったポストが大きな反響を呼んでいる。鳩野は、「アニメではあまり聞かないでしょうが、ゲームでは社員が声優を務める事が80年代には良くありました。私も何度となく務めた事があります(笑)」と自身の経験を語り、筆ペンで描いたイラストを添えてポストしている。

  社内声優とは、ゲーム会社などの社員がキャラクターの声を担当する、というものである。もちろん社員なので、専門の声優ではない。最近は減ってきたが、1980~90年代のゲームには社内声優が多かった。鳩野のポストには、当時を懐かしむ人たちが続々コメントを寄せている。

  なかでも、『ぷよぷよ』『魔導物語』などのヒットを生み出したコンパイルは、社内声優を盛んに起用したメーカーででる。X上でも社内声優の例として、コンパイルのゲームを挙げる人が多かった。

  というのも、『ぷよぷよSUN』のボスの一人であるサタンさまの声は、なんと社長の仁井谷正充が演じていたのである。ちなみに、『ぷよぷよ通』のセガサターン版では、マスコット的存在であるカーバンクルを仁井谷が演じている。社長がこれほどの重要なキャラの声を演じた例は珍しいのではないだろうか。

■社内声優にファンがついていたコンパイル

『月刊 コンパイルクラブ』(1997年8月号)

 コンパイルは「コンパイルクラブ」などの情報誌を自社で発行しており、社員の露出度も高かった。そのため、社員にも熱狂的なファンがついており、ゲームでも社内声優の起用を一種のウリにしていたこともあった。

  残念ながら、コンパイルは1998年には伝説級の倒産劇を繰り広げてしまうのだが、コンパイルの元社員からは『Fate/Grand Order』で空前のヒットを飛ばす武内崇など、数多くのクリエイターが誕生している。コンパイルの体制には賛否両論あるものの、一種独特の社風が多くのクリエイターを惹きつけ、育てたのは紛れもない事実ではないだろうか。

  ゲーム会社が社内声優を起用した背景にはなにがあったのだろうか。一つは、予算を削減する狙いがあったのだろう。しかし、それ以上に、ゲームを遊んでみると社員が楽しんでいるなと感じられる。専門の声優ではないからこそ、演技は確かにぎこちなかったりするのだが、高校や大学の学園祭のようなノリが強く感じられる。内輪ネタで楽しむ感じだ。

  こういった遊び心あるモノづくりの精神は、昨今、忘れ去られているような気がするが、どうだろうか。社内声優は、ゲームの発展期を陰で支えた重要な文化であったといえよう。

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