【漫画】クラスメイトの願いを叶える天使と、一度もお願いしない少女……友情の行方が予想外で切ない

【漫画】クラスメイトの願いを叶える天使

ーー創作のきっかけを教えてください。

Ikaring:2022年頃に友人と通話していたとき、自分のモヤモヤとした心情について話しました。そのとき友人から「その気持ちを形に残したい方がいい」と言われ、創作した作品が本作です。

 当時から現在に至るまで、作品を完成させるために、約1年半に渡って定期的に友人がミーティングの時間を設けてくれました。最初は自分の思っているモヤモヤが何なのか、3カ月ほどかけて突き詰め、そのあとどんな形として残すかという話になった際に友人は漫画を描いていたので、自分も漫画を描くことになりました。

ーーIkaringさんのモヤモヤした心情の正体とは?

Ikaring:未だに当時の自分がモヤモヤしていたものが何だったのかわかっていませんが、おそらく「もっと自分がこうなれたらいいのにな」という思いがあったのだと思います。

 本作を完成させるまで複数のネーム(コマ割りなどを記したラフ画)を描きました。没となったものを見返すなかで、主人公は褒められたいのに空回りしてしまう人物ばかりとなっていたのです。

 作品を描く前にもモヤモヤの正体は「ただ自分が褒められたいだけじゃないのか」というシンプルな結論にたどり着いていました。そんなモヤモヤに対する答えを、自分の経験を織り交ぜながら本作を描きました。

ーーIkaringさんのモヤモヤが表れていたのは主人公であるエルさんですか?

Ikaring:どちらかと言えばリカの方ですね。エルは無頓着に頑張っていて、そんな彼女を見てリカはしんどさを覚えていたのだと思います。

ーー1年以上かけて本作を描き終えた際、どのような感情を抱きましたか?

Ikaring:創作する期間が長くなってしまったため、モヤモヤとした悩みを時間が解決してくれたと思うこともありました。そのため制作中にはエルたちに共感していない時期もありました。本作を完成させて、自分はエルたちから卒業できたのかなと思います。

 ただ本作を制作するなか、友人とはモヤモヤを解消するためではなく、モヤモヤをそのまま描こうと話していたので、漫画として成立させるためのオチを描くことに苦労しました。本作は主人公が何かを解決するのではなく、モヤモヤの解が見当たらない主人公として物語を着地させたかったので。

 そんな思いから本作ではエルが記憶を失くし、率直に曲の感想を言えるようになるオチにしました。エルにとってはポジティブな変化を得るハッピーエンドとして、自分のモヤモヤをそのまま描きつつも作品として成立させられたのかなと思います。

ーー好きな子が好きだからという理由で、その子の聴く音楽を好きになることに親近感を覚えました。誠実な動機ではないかもしれませんが……。

Ikaring:CDを貸してもらったり、ライブに誘ってもらったりなど、僕も音楽で関係が深まることを多く経験してきました。その音楽を聴いているのは自分が好きだからなのか、その人と仲良くなりたいからなのか……。どちらが良い・悪いはないかとは思いますが「自分もその音楽が好きだ」と嘘をつき、その人を騙していると悲観的になることもあったと思います。

ーー印象に残っているシーンを教えてください。

Ikaring:物語の終盤、エルとリカが問答し合うシーンにて描いた、エルのお腹が鳴ってしまうところです。お腹は空いているけれど、お願いは聞きたくない……。身体と心情のズレがお腹の音でスッキリと表せた1コマだと振り返っています。

ーー今後の活動について教えてください。

Ikaring:数十ページの漫画を完成させたのは本作が初めてでした。1年以上かけて制作した漫画が完成し、ひと段落したなか、原稿を見返すと当時の自分は楽しそうだなと思えます。もし次に漫画を描くとしたらもう少し短い作品を描き、漫画を描き終わらせることに注力したいです。

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