ありがとう『キャプテン翼』 いま振り返る作品を彩った素晴らしき“キャプテン”たち
1981年の連載開始から40年以上の長きに渡り愛されてきたサッカーマンガ『キャプテン翼』(高橋陽一)。誌面での連載は惜しまれつつ終了となったが、今後はWEBサイト「キャプテン翼WORLD」に掲載の場を移して、「ネーム形式」で週刊連載していくと発表され、ファンから感謝の声が上がっている。この機会にシリーズを読み返そうという人も多いだろう。
本作はタイトルに冠されている主人公の大空翼がキャプテンとしてチームを勝利に導いていくストーリーが描かれる。やはりキャプテン=大空翼のイメージがどうしても強いが、作中では彼以外にも個性豊かなキャプテン達が多数登場する。本記事では、そんな愛すべきキャプテンたちを紹介していきたい。
溢れる闘志でチームを牽引する猛虎、日向小次郎
まずは大空翼のライバルであり、日本代表のエースストライカーである日向小次郎の存在は外せないだろう。小学生時代には明和FCの主将として闘志溢れるプレーで勝利への執念を燃やす。味方を激しく鼓舞する姿は、時に萎縮させてしまうこともあるものの、チームメイトからは厚い信頼を勝ち得ている。決して器用に人とコミュニケーションが取れるタイプではないが、貪欲にサッカーに打ち込みストイックに己の牙を研ぎ続ける日向は、まさに背中で示すタイプのキャプテンだ。
東邦学園中等部在籍時には、チーム練習をボイコットし1人沖縄に渡り、小学生時代の恩師である吉良耕三の元で修行に励む。沖縄の荒波に揉まれながら、自身の代名詞でもある必殺技「タイガーショット」を身につける。しかし東邦学園の監督である北詰誠とはキャプテンでありながら勝手にチーム練習を放り出したことで対立し、結果全国大会の舞台では試合に使ってもらえない日々が続く。
そして迎えた決勝戦の前日、なんと日向は北詰監督に決闘状を叩きつけるのだ。グラウンドに呼び出した北詰監督に対し、プライドの塊のような日向が土下座をし試合出場を懇願するシーンはファンの間では語り草だ。その後、東邦学園のチームメイト達もグラウンドに駆けつけ、土下座しながら日向の試合出場を懇願するシーンからは、仲間達の日向への分厚い信頼のほどが伺える。
日向小次郎には、その生き様に触れることで一生ついていきたくなるような男の色気を感じる。作品世界を体現する素晴らしい「キャプテン」の1人と言えるだろう。
チームワークを重んじる努力の男、松山光
極寒の北海道ふらので培った粘り強さと献身的なプレーが特徴的な選手が松山光だ。積雪の影響で満足にグラウンドを使える期間が極端に短いというハンデを抱えながら、小学生時代から共に練習を重ねて来たメンバーとのチームワークで全国大会を勝ち上がってきたふらの。主将として仲間を支える姿は、まさに縁の下の力持ちという言葉が似合う存在だ。
必殺技の地を這う低弾道のシュートである「イーグルショット」でロングレンジからもゴールを奪える能力があり、加えて高いボールキープ力も併せ持つ松山。「才能がない奴は努力するしかない」と愚直に努力する姿がとても印象的だ。さらに全国中学生大会準決勝、大空翼率いる南葛中学との一戦。空中で体制を崩してしまい痛めている左肩から落下しそうになる大空翼を咄嗟に庇うなど、スポーツマンシップに溢れた一面も好感が持てる。
そしてプレースタイル同様、一途に愛する女性を想う姿も美しい。ふらの中学のマネージャー美子から贈られた白のハチマキに白い糸で刺繍された隠されたメッセージに松山が気づくエピソードは、その後の展開と併せて甘酸っぱさを感じずにはいられない。仲間を信頼し、仲間の信頼に全力で応える松山光。小学生時代に食堂でただ軽くぶつかっただけで日向小次郎に激しくビンタされるという印象的なエピソードもあり、苦労人な1面もあるが、素晴らしいキャプテンであることは疑いようがないだろう。