『ドラゴンボール』「フリーザ編」までが“見せ場”なのか 「魔人ブウ編」ラストに見る“鳥山明的”な結晶

鳥山明の圧倒的「センス」を分析

人と人とがつながっていく物語

  さて、本稿の冒頭で私は、この孫悟空と魔人ブウのラストバトルが、「極めて鳥山明的」であると書いた。それはいったいどういうことかといえば、要するに、この戦いで描かれているのが、“人と人のつながり”が生み出す力の強さであるということだ。繰り返しになるが、魔人ブウを倒したのは、孫悟空ひとりではない。彼の仲間たちと、世界中の人々の想いが1つになったからこそ、「元気玉」というかたちで、恐ろしい敵を倒すことができたのである。

  そして、そうした人と人とがつながっていく様子は、鳥山明の漫画の多くで、(派手なバトルや秀逸なギャグの陰で)さりげなく描写されている。たとえば、父親(悟空)が「あの世」に帰ってしまう前に「ダッコ」して欲しいと思っている孫悟天の恥ずかしそうな表情(『DRAGON BALL』JC版・40巻)や、則巻千兵衛一家の慌ただしくも温かい日常を眺めている山吹みどりの微笑(『Dr.スランプ』JC版・9巻)などを見てほしい。いずれもセリフのない1カットだが、そこには、人が人を想うときに生まれる優しい気持ちが溢れているから。

  そう、極論すれば鳥山明の漫画とは、ギャグ漫画であろうとバトル漫画であろうと、人と人とが心を通わせ、やがて家族や仲間になっていく物語であり、だからこそ、いまだに多くの読者から愛されているのだ。そしてその魅力は、この先もずっと色褪せることはないだろう。

トップ画像:©️バード・スタジオ/集英社・東映アニメーション

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