「商業カメラマンが育っていないんです」ベテラン雑誌編集者が嘆く、出版業界の構造的な問題点

■素人でもプロを名乗れる時代に

 ところが、1990年代にカメラのオートフォーカスの技術が進化し、2000年代にデジタル化が一気に進むと、シャッターを押すだけで誰でもそれなりに見栄えのいい写真を撮れるようになってしまった。そして、平成不況の影響でフォトグラファーに弟子をとる余裕がなくなり、いきなり独立する若手が増加した。

 「最近では写真のフリー素材サイトが広まり、出版社も、ニュースサイトも、WEB媒体も、素人の写真を使って誌面や記事を構成するようになりました。今ではライターや記者が撮影を行うケースも増えています。写真一枚の価値、そしてフォトグラファーの専門職としての地位が、30年ほどの間に急激に下落したといえます」

  こう編集者が指摘するように、現代のフォトグラファーは、修業を経験しないままいきなりプロになった人が少なくない。ネットに写真を上げていたら編集者から声をかけられ、そのまま仕事を続けている人もいるのだ。

■上位のプロはいつの時代も技術が高いが……

 誤解を招かないように言えば、第一線で活躍している若手フォトグラファーは自ら技術を研鑽し、学習し、技術力を高めている人がほとんどである。そういった人の作品を見ると、決して技術的なレベルも、芸術的なレベルも落ちていないように感じる。しかし、編集者はそれが問題なのではないと話す。

 「いつの時代も高いレベルの人は自分で勉強するし、黙っていても成長していくので問題ないんですよ。問題は、中間層のレベルが下がっていること。雑誌を作るためにはアーティスト的なカメラマンよりも、平均より少し上の技術をもち、なんでも撮れる人が必要不可欠なのです。とにかく、先輩のカメラマンなら誰でもできていたようなライティングとか、基礎的な技術が受け継がれていないのを見ると、危機的な状況と感じます」

  あらゆる業界で人手不足が叫ばれているが、その一方で、悪い方向に合理化を推し進め、人材育成をないがしろにしてきた面は否定できないのではないか。そのツケが今になって露呈してきているのだ。技術の継承は一度断ち切られると、二度とできなくなることが多い。2020年代、若手の人材育成は急務といえる。

 

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