『東リべ』の次はコレだ! 人気沸騰中の不良漫画『WIND BREAKER』が描く“新しい不良”の形
『ろくでなしBLUES』や『特攻の拓』、『今日から俺は!』に『ドロップ』、『クローズ』など、昭和から平成にかけてのヤンキー漫画は男性を対象にした作品がほとんどであった。時代が令和に突入すると、「不良もの」と言いつつ美麗なビジュアルに繊細なストーリー、時に非日常的な要素を盛り込んだ作品が人気を獲得。代表的なのは『東京卍リベンジャーズ』や『OUT』だろう。泥臭すぎず、スタイリッシュな作風で女性からも高い支持を受ける。ヤンキー漫画はもう男性だけのものではなくなったのだ。
いま話題沸騰中の漫画『WIND BREAKER』も女性人気が高い作品で、従来の不良たちの概念をひっくり返すような驚きの設定に注目が集まっている。そして目新しいだけでなく、ヤンキー漫画を読み慣れた方にもおすすめしたい要素も満載だ。大きな話題を呼ぶ理由は、一体どこにあるのか、解説していこう。
不良=人に迷惑をかけるもの、という概念に変化が
『WIND BREAKER』はウェブコミック配信サイト『マガジンポケット(通称:マガポケ)』にて2021年1月より連載がスタートしている。瞬く間に人気が集中しわずか連載1年未満で「渋谷ジャック」企画がスタート。驚異のスピードで知名度を上げ、2024年4月からはテレビアニメの放映が予定されているほどだ。
なぜ、ここまで読者の心を掴んだのか? それはきっと従来のヤンキー漫画とは大きく違う、ある大きな特徴が関係している。つまり、作品に登場する不良たちは風鈴高校に通い、街を守るために動くヒーローなのだ。地域の住民が困った時は全力で動き、誰かのために拳を振り上げる。人を、街を誰よりも優先して君臨する「ボウフウリン(防風鈴)」と呼ばれる校内の自警団は、街の人々から愛される異例の存在だった。
主人公の桜遥(さくらはるか)は街で頂点を目指すべく、風鈴高校へ入学した高校一年生。ボウフウリンの新鮮さに魅了され、てっぺんをとるために奮闘する物語だ。
本来不良とは他人に迷惑を掛け、社会のハズレ者として扱われがち。地域住民からは忌み嫌われ、大人たちからは真っ当な道を進めと叱責を受けるのがヤンキーの通る道だが、風鈴高校の生徒たちは違う。他人のために体を張って街を守る、全く新しい形のアウトサイダーとして君臨する。好き勝手暴れまわり、己の自由を貫くプロトタイプなヤンキーからは全く想像もつかないのがボウフウリン。新感覚の設定と世界観に胸を打たれた読者は多く、それが人気へと繋がっているのだろう。
優しさや愛情に慣れていない一匹狼の主人公
少年漫画の主人公と言えば、正義感が強い熱血タイプ。曲がったことは許せない“いけいけどんどん”なキャラクターがメジャーだが、本作の主人公の遥は、これまた一風変わった存在だ。正義感の強さはピカイチだが、仲間とつるむことに慣れていない孤独な一匹狼なのである。
生い立ちについて深く明かされていないが、遥は過去のトラウマにより人と距離を縮めるのをが激しく嫌う。他人を簡単に信用できず、常に1人で生きてきたため“仲間”という存在に激しい違和感を抱く。決してそれは嫌な感情ではないけれど、人間の優しさや愛情が分からない彼にとってはどうしたらいいかわからないのだ。
ボウフウリンに一員となり、風鈴高校の仲間と過ごすにつれて心を開いていく遥。『WIND BREAKER』は凶暴な一匹狼から徐々に姿を変えていく、桜遥の成長物語でもある。