怪作かつ傑作! 衝撃のダークすぎるおとぎ話『芥川龍之介の桃太郎』が面白い
衝撃のダークすぎるおとぎ話、怪作かつ傑作の、まるで現代を予言するかのような驚きの物語『芥川龍之介の桃太郎』(河出書房新社)が刊行された。みんなが知っているおとぎ話が、芥川龍之介にかかるとこんなにも面白く考えさせる一冊に。
おとぎ話とは全く異なる、稀代のワルの桃太郎。平和で牧歌的な鬼が島にお供を連れて征伐に向かうが……。現代の世の中を暗示するような物語と見応えのある挿絵で何度も読み返したくなる絵本。
誰もが知っているおとぎ話の『桃太郎』。桃から生まれた桃太郎が犬、猿、雉を連れて鬼が島に鬼退治に行くというストーリーの骨格は同じだが、いわば芥川龍之介によるパロディのような作品。芥川の手にかかると、ユーモアや皮肉などが随所に散りばめられ、こうも面白く、鋭く、厚みのある物語になる。
桃太郎と鬼との関係は、戦争や紛争の絶えない現代の世の中を表しているようで、100年前に描かれた本とは思えないぐらい。まるで予言の書かと思える。そんな芥川版『桃太郎』を現代世界に甦らせたのは寺門孝之による、奇抜で素晴らしい挿絵である。全身ピンクで、編みタイツ姿の桃太郎は、まさに時空を超えて、物語を豊かに肉付けしている。
なんども繰り返し読みたくなる、なんとも不思議な力のある絵本だ。
「人間が相争う理由がわかった。こんな桃太郎が目の前に居ったら俺もついていく。目の虚無がえぐい。全員えぐい。」――町田康
書誌情報
書名: 芥川龍之介の桃太郎
著者: 芥川龍之介 著/寺門孝之 画
仕様:B5判変型/上製/52ページ
発売日:2024年1月22日
税込定価:1980円(本体価格1800円)
ISBN:978-4-309-29373-8