発売から15年『ウェブはバカと暇人のもの』が話題 著者・中川淳一郎が実践する「炎上」を防ぐ唯一の方法
■健全なネットライフのためにはエゴサは厳禁
――私は職業柄、学者の知り合いが多いのですが、ある学者は“エゴサ”をやめることができないと言っていました。これは学者に限ったことではなく、一般人も同じです。批判的なコメントも少なくないし、精神的に傷つくリスクも大いにあるのに、なぜエゴサをしてしまうのでしょうか。
中川:純粋に、人から褒めてもらいたいからです。学者に限らず、芸能人やコメンテーターがテレビに出た直後にエゴサをするのは「意見が鋭かったですね!」「参考になりました!」などのコメントを見て、快感を得たいから。それに尽きます。人って褒められたくてしょうがないんですよ。わしは別に褒められたくなんかないから、絶対にエゴサなんてしませんが(笑)。
――漫画家の小林よしのりさんは、エゴサをすると誹謗中傷のコメントしか出てこないから、絶対にネットはしないと言っていました。
中川:それは正しいね。著名人はもちろんですが、特に一般人が健全なネットライフを送るには、エゴサは絶対にやっちゃいけないんです。一度エゴサをしてしまうと、何度も何度も繰り返してしまい、中毒状態に陥ってしまう。そして、その都度批判的な意見を目にして心が折れてしまうのです。やるとしても、「中川淳一郎」ではなく、「中川淳一郎さん」みたいに、「さん」づけにして検索するべき。他にも、「中川淳一郎」+「さすが」とか、「中川淳一郎」+「かっこいい」みたいなポジティブな言葉を組み合わせるのもいいでしょう。これなら、肯定的なコメントしか表示されませんからね(笑)。
――批判的なコメントを見て心が折れるくらいなら潔くネット断ちをして、自分を防衛すればいいと思います。しかし、それができないのは、やはりネット中毒になっているからなのでしょうか。
中川:それもそうだし、批判の中にもやはり肯定的なコメントがあるからです。人は誰しも、不安になればなるほど、肯定的なコメントを探してエゴサを繰り返してしまうのです。世の中に何人かは自分のことを支持している人がいるはずだと、自信をなくした人ほどエゴサをする傾向にあると、わしは見ています。
■スマホを手放せ! ガラケーにしろ!
――炎上の事例を見てきましたが、これは決して対岸の火事ではありません。ネットユーザーなら誰しも起こり得ることですし、現に起こっていますね。ネットとの付き合い方を根本から考え直す時期に来ているかもしれません。
中川:「とにかくネットを見るな!」「ネットから離れろ!」としか言いようがないし、それしか対策の取りようがありません。最大の秘策は、「スマホを捨てて、ガラケーにしろ!」ということ。それですべての問題が解決ですよ。
――ガラケー、まだ使えるんですか?
中川:使えますよ! ドコモなら2026年まで使えるぜ! わしは今ソフトバンクなんだけれど、もうすぐ対応が終わるらしいから、ドコモに乗り換えて最後までガラケーを使おうと思っているくらいです。
――ネット社会に精通する中川さんが、なぜ頑なにガラケーにこだわるのでしょう。
中川:わしがもしスマホを持っていたら、酔っ払っている時にTwitterを開いて、暴言を吐きかねない。実際、飲んだ勢いでツイートして、炎上した人がいるでしょ。俺はそれをガラケーにすることで抑制しているわけ。パソコンの前で一度冷静になってからツイートする状態にしているんですよ。
――確かに、一歩立ち止まって考えるためにガラケーは最適なツールですね。でも、中川さんほど多忙なライターがガラケーで仕事ができるんですか(笑)。
中川:できますよ(笑)。LINEだって使ったことがないから、編集者ともやり取りは電話かメールですが、問題は起きていません。もっと現代人はネットから解放されたほうがいいですよ。特に、スマホは一度手放してみて欲しい。いかにネットの縛りが多かったのかわかると思うし、ネット炎上なんかと縁のない暮らしが送れます。そのかわりに、リアルな人間の付き合いを密にした方がいいと思います。それがこれからの時代を楽しく生き抜くための秘訣なのではないでしょうか。