発売から15年『ウェブはバカと暇人のもの』が話題 著者・中川淳一郎が実践する「炎上」を防ぐ唯一の方法
■ネット炎上にどう対処すべきなのか
中川淳一郎は、現役のネットニュース編集者だった頃、ネットを取り巻く様々な問題点を述べた『ウェブはバカと暇人のもの 現場からのネット敗北宣言』(光文社新書)で大きな話題を集めた論客である。
この新書は発売から約15年経つが、内容が現代にそのまま当てはまるので驚かされる。中川が本の中で紹介したネット炎上やバイトテロは未だに社会問題化し、炎上は繰り返されているままだ。
ただ、15年前と大きく変わったのは、ネットをより多くの人が利用するようになったことだ。これに伴い、炎上はもちろんだが、エゴサをして批判的なコメントを見つけては精神的な苦しみを抱える人も増えているとされる。
SNSと上手に付き合っていくにはどうすればいいのだろうか。11月2日には『日本をダサくした「空気」怒りと希望の日本人論』(徳間書店/刊)を出版、ネット界隈の問題を知り尽くした中川に、存分に語ってもらった。
■インテリ層のXが次々に炎上
――Xを見ていると、連日のように炎上騒動が巻き起こっていて、うんざりしてしまいます。
中川:そもそも、ネットは怖いものです。だって、ネットはバカと暇人のものですから(笑)。新聞や雑誌なら、ある程度の読者のレベルを想定して編集しているから、炎上が起きにくい。でも、ネットはバカと暇人を含む不特定多数が見るから、炎上が起きやすいんです。今や、医クラ(注:ネット上にいる医者などの“医療クラスタ”)や学者までTwitter(注:中川氏は頑なにXとは言わない)をやっていますが、これは非常に危険な傾向だと思います。彼らのように専門性の高い業界で仕事をしている人がTwitterなんかやって、“業界ルール”を押し付けたら炎上するに決まっているでしょうに。
――ネット社会の中でも特に混沌としているXを、学者や医者がやりたがるのはなぜでしょうか。
中川:学者が論文なんか書いたところで一般人は誰も読まないし、反響なんてありません。ところが、Twitterなら一般人からダイレクトに意見がくる。特に、医クラはコロナ騒動が始まった頃、「アドバイスが参考になった」という肯定的なコメントが多く寄せられたから、万能感が得られて最高だったんでしょうね。彼らはネット中毒になってしまったんだと思いますよ。
――ネットやテレビは、無名だった人を表舞台に出し、英雄に祭り上げます。医クラも、注目されることで得られる快感を知ってしまったわけですね。
中川:まさに、ネットやテレビの魔力です。医クラはコロナ騒動で一気にTwitterのフォロワーを増やしたんですよ。逆に、コロナ騒動がなかったら少ないままだったろうし、注目なんてされなかったでしょう。しかも、連日のようにテレビに出演して、芸能人相手に話ができたわけでしょ。純粋に嬉しかったんだと思います。こういった快感を一度味わってしまうと、なかなか抜け出すことは難しいんです。
――とはいえ、医者や研究者などの専門家はそれなりのインテリであるはず。そういう立場の人が炎上を起こしてしまうのは驚きです。
中川:炎上に耐え切れなくなったのか、昨年くらいから「名誉を傷つけられた」と言って、医クラが一般人に対し開示請求を起こす例も続出していますね。そもそもなぜ、医クラに対する反発が増えたのか。彼らは3年以上も感染対策を押し付けたものだから、人々の不満が溜まってしまったのだと思います。3年前は感謝のコメントが多かったヤフコメも、今やバッシングの嵐ですから。彼らはこんなはずじゃなかったと思っているかもしれないし、ひょっとしたらなぜ叩かれているのかが、わかっていないかもしれない。でも、わしに言わせたら、こうなることは予想がついていたんですよ。