和牛、解散への発端は? 初のエッセイ集の刊行時期と重なる「亀裂」のはじまり

和牛、解散への発端は? 

  吉本興業に所属するお笑いコンビ、和牛の解散が12月12日に発表され、ネット界隈が騒然となっている。和牛は水田信二(ボケ)、川西賢志郎(ツッコミ)のコンビで2006年12月に結成。これまでに第44回NHK上方漫才コンテスト優勝のほか、M-1グランプリでは16年、17年、18年と3年連続で準優勝を果たすなど、吉本屈指の実力派として知られていた。

  解散時期は2024年3月末と発表され、約17年3ヶ月に及んだ活動に終止符を打つ。今回の発表を受け、一時、Xでは「和牛解散」がトレンド入りを果たしたほどで、その衝撃の大きさがうかがえる。

  解散の理由は、水田と川西の間にすれ違いが生じ、溝が生まれていたためといわれる。双方のSNSにコメントが発表されている。大きな要因として挙げられるのは、3年前に、水田が複数回の遅刻を重ねたことといわれる。水田はそれが事実であると認めつつも、「漫才のパフォーマンスにおいて川西の要求に応えられないことがあり、漫才への取り組み方について川西との差を感じるようになりました」と、苦悩を述べていた。

  曰く、「川西の求めるものと自分のやりたいこととのギャップが徐々に開いていき、相方に対して意見することができなくなり、楽しかった漫才が苦しいだけの毎日になっていました」というのが、水田の率直な気持ちのようだ。対する川西は、「3年ほど前から、僕はより舞台に力を入れたいという思いが強くなる一方で、水田の劇場出番への遅刻が続いたことをきっかけに、自分と彼との漫才に対する姿勢の違いが目立つようになりました」と心境を吐露。

  こうした2人の温度差の違いはファンにも衝撃的に映ったようで、「水と油だ」という意見が相次いだ。また、水田の「川西のことは、絶対に大丈夫な人なので心配はしていません。僕自身のことはすごく心配だらけなのでこれまで以上に応援してください」というコメントは賛否両論あり、「水田さんらしく、最後を笑いで結んでいて微笑ましい」「川西さんへの愛が詰まっている」という意見もあれば、「違和感が大きい」という否定的なコメントもあった。

  さて、和牛は2021年3月に初のエッセイ集『和牛の一歩ずつ、一歩ずつ。』を刊行していた。「ダ・ヴィンチ」の連載をまとめたものだが、本書が刊行されたのは今から約2年9ヶ月前である点に注目したい。勘がいい人は気づいたかもしれないが、執筆・編集もしくは刊行された時期は、ちょうど水田が遅刻を繰り返していた時期と重なるのだ。

  折しも、2021年は和牛結成15年という節目の年でもあった。エッセイ集が発売されたこの時期が、2人にとって人生を考える何か重要なターニングポイントになった可能性がある。『和牛の一歩ずつ、一歩ずつ。』は2人の子ども時代の話から、お笑いに対する考え方まで、率直な思いが綴られた一冊である。編集を行いながら、2人はこれまでの活動を振り返り、様々な意見をぶつけ合っていたのだろうか……などと想像してしまう。

  芸能人のエッセイは、何気ない一文が、後の大きな出来事に繋がる伏線になっていることもある。解散が決まった今だからこそ本書は改めて注目されるべきだし、読み返してみる価値がありそうだ。

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