都築響一、大谷亨『中国の死神』になぜ注目?「中国で最も面白い、地方と庶民のカルチャーを顕在化した」
――『Real Sound ブック』では、大谷さんのインタビューもしているのですが、中国の朝夕の公園の面白さを力説されていました。
都築:いい歳した大人が楽しそうに踊っていますよね。あれが実は彼らの豊かさでもある。中国は定年が早くて、政府のアパートに住むなら安いし、年金もある。問題はあっても、彼らはそれなりに豊かでハッピーであることを知るべきですね。
――こちらが思っていることは実像と違う?
都築:日本じゃ忙しいからとコンビニの弁当で済ませてしまうところを、中国では忙しくてもお金をかけられなくても、ちゃんと手を掛けて食事を作るのが普通だったりします。夫婦で長距離トラックの運送しながら、夫は運転、奥さんが助手席で粉から麺を打ったり餃子をつくったりしてますから。それでちゃんとした食事をする。男でもうまい中華料理をつくる。『中国の死神』からはそういう彼らの生活が見えてきますね。
――だらしないのに、中華鍋振るうと、なかなかやるオッサンいますよね。料理のスキルがある。
都築:日本がコンビニのご飯になっちゃうのは忙しいからというのもあるでしょうけど、料理に向き合う姿勢がそもそもちがうということのほうが大きいと思います。でも、中国の人はそれをやる。お金がなくても、食べるものにちゃんと向き合ってますよね。
――中華は安い材料でもうまいですからねえ。
都築:男女平等なんか、中国の方が進んでますよ。もちろん、中国共産党のトップは男ばかりだけど、普通の会社は女性にも開かれています。偏った情報で中国を下に見る人は多いけど、事実は別のところにあります。
――大谷さんの本でも、旅行記パートで、うまいもの食ってますよね。
都築:そうですね。町で出会ったふつうのひとたちに教わりながら、みんなが食べてるおいしいものを見つけたり。日本のテレビの旅番組で、ヤラセみたいに道行くひとに声かけるのとはちがってね。