『アオアシ』福田達也だけじゃない、“現役時代”が見てみたいスポーツ漫画の指導者たち

 人気サッカー漫画『アオアシ』のコミックス最新刊となる32巻が5月30日、発売された。この巻には、主人公・青井葦人が所属する「東京シティ・エスペリオンFC」ユースチームの監督=福田達也の過去編が収録。彼がリーガ・エスパニョーラでいかに旋風を巻き起こし、なぜ若くして現役を退いたか……という謎が解き明かされつつあり、初登場時から明らかに只者ではなかった福田達也というキャラクターに、厚みと説得力が生まれている。

 スポーツ漫画のコーチや監督には、魅力的なキャラクターが多い。“現役時代”がしっかり語られているキャラもいれば、経歴や噂だけがヒントになっているキャラもいる。作中の魅力的な選手たちを導く立場の彼らが、現役時代どんな選手だったのか気になるところだ。

 例えば、『アオアシ』と同様に現在大人気のサッカー漫画『ブルーロック』の絵心甚八。世界一のストライカーを養成する「ブルーロック(青い監獄)プロジェクト」の首謀者であり、“指導者”の印象は薄いが、日本をW杯優勝に導くためのコーチとして招聘されており、常識破りの手法で選手の育成に臨んでいる。

 絵心の細かな経歴は語られていない。まだ30歳の若さで、選手たちから知られていないことを考えると、現役時代、有名プレイヤーではなかったと思われるが、偽名を使い、特徴的なマッシュルームヘア&メガネで見た目を偽装している可能性もあるだろうか。というのも、作中で世界一のストライカーとされるノエル・ノアが「人生最初のライバル」と語っており、それが「選手として」ならば、相当な実力者だったことが予想される。

 身長189cmのフィジカルと高いサッカーIQ、そして狂気的ともいえる“世界一”へのモチベーション。「過去編」が描かれる可能性も低くなさそうだが、いったいどんなプレイヤーだったのか気になるところだ。

 スポーツ漫画の“監督”として高い知名度を誇るキャラクターといえば、『SLAM DUNK』の安西先生(安西光義)が挙げられるだろう。具体的な指導力については意外と描かれていないが、人心掌握に長け、あまりにも有名な「あきらめたらそこで試合終了ですよ」などの名言を残している。

 現役時代は「日本代表選手」だったことが明かされている安西先生。その他の情報は乏しく、ファンはさまざまに考察を広げているが、175cmというバスケットボール選手として高いとはいえない身長と、湘北高校での指導内容(桜木に対して、リバウンドなどの指導は赤木に任せており、“シュート2万本合宿”において美しい手本を見せている)から、「ガード」という説が有力だろうか。いずれにしても、スリムで軽快に動いていた時代の安西先生を見てみたいファンは多いはず。また、高校時代にしのぎを削ったという、陵南・田岡茂一監督、海南大附属・高頭力監督の過去も気になるところだ(田岡は自身を仙道、高頭を流川に例え、選手たちから「ウソだ!」の総ツッコミを受けていた)。

 野球漫画にも気になる指導者は多いが、昨年惜しまれつつ連載を終えた『ダイヤのA』シリーズの片岡鉄心は、「プロ級の実力を持ちながら指導者になった」という経歴から、主人公としても描けそうなキャラクターだ。青道高校野球部の監督を務める彼の経歴は、それなりに細かく描かれている。同校OBであり、二年生で夏の甲子園準優勝、三年生で春の選抜ベスト8に導いているエースピッチャーであり、そのポテンシャルは指導にも存分に生かされている(140km/h前後の速球を投げ続ける、贅沢なバッティングピッチャーにもなっている)。プレイヤーとしての能力はもちろん、規律を重んじながら、すべての選手に目配りを忘れない理想的な監督としての資質はどこからきているのか、より細かなエピソードを読んでみたくなるキャラクターだ。

 「名選手、必ずしも名監督にあらず」との言葉もあるように、必ずしも選手として輝かしいキャリアがあるキャラクターばかりではないが、強い印象を残している指導者の過去は、やはり気になるもの。人気作のスピンオフが盛んに行われている昨今、「この監督の過去が知りたい」と声をあげておけば、いつか実現する可能性もあるかもしれない。

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