「少年ジャンプ」個性派ヒロイン続々、女勇者に格闘家、天才スケート少女……“属性てんこ盛り”な理由
2023年の「週刊少年ジャンプ」ではさまざまな新連載が始まり、人気を博している。そこでとくに注目すべきは、作品の軸となるヒロインたちの設定だ。いずれも驚くほどに個性豊かな女性キャラクターが登場しており、あえて死語を使っていえば“萌え属性”がてんこ盛りとなっているのだ。
まず、今年始まった連載作品でもっとも勢いがある藤巻忠俊の『キルアオ』を見てみよう。同作は中学生になった伝説の殺し屋を主人公とした学園バトルコメディだが、そこでヒロインとして登場するのが蜜岡ノレンというキャラクター。大手製薬会社の社長令嬢で、「婚約者に会社を継がせる」といういかにも“お嬢様キャラ”らしい展開が描かれている。
カナダハーフで容姿端麗、運動も勉強も完璧、極度の男嫌いで平凡な学生生活に憧れている……といった設定は、もはや王道尽くし。しかしその一方、親戚が作ってくれたラーメンに心を奪われ、学校に秘密で庶民的なラーメン屋で働いているというギャップに満ちた素顔も隠し持っている。クールな顔から不意に飛び出す笑顔の破壊力は、殺し屋顔負けと言っていい。
また、川田による総合格闘技マンガ『アスミカケル』には、大牙奈央という異色のヒロインが登場。彼女は総合格闘技(MMA)のプロを目指す格闘少女なのだが、その本性として、戦いをこよなく愛するバトルジャンキーな部分を秘めている。狼のように歯が尖ったワイルドな口元は、その性格を表現したキャラクターデザインだろう。
しかし見た目の全体はワイルドどころか、むしろ清楚系のイメージ。なにせアンダーリムの眼鏡がチャームポイントで、主人公・二兎の好みに突き刺さり、初対面で「眼鏡美女」という感想が飛び出したほどだ。そんな彼女がパワフルな立ち技を繰り出す姿は、意外性という魅力に満ちている。
2023年9月から始まった新連載でいえば、ペアフィギュアスケートをテーマとした『ツーオンアイス』のヒロインも個性的だ。同作は主人公の峰越隼馬が幼かった頃、早乙女綺更という天才スケート少女の演技に魅了されたことから物語が始まる。
綺更はどこか少年のようなショートカットのヘアスタイルで、言動もさっぱりとしていてボーイッシュな性格。その一方で隼馬を未知の世界に導いていく姉御肌な一面もある。さらには謎多き過去を抱えたミステリアスな部分もあり、その魅力はまだまだ出尽くしていない。
令和版「Fate」との呼び声があるファンタジー漫画も
庶民派お嬢様に眼鏡姿の格闘家、天才スケート少女など、多彩なヒロインがこれでもかと出揃うなか、林快彦の『魔々勇々』は負けじと個性的なキャラクターを生み出していた。
同作は勇者と魔王が共生する時代に、勇者の肩書きを持って生まれた少年・コルレオが主人公。その母親として登場した、子どものような見た目の魔王「マママ」(38)が話題を呼んだ。
しかしどうやら正式なヒロインポジションは、別のキャラクターだったようだ。その後、異世界からやってきたエリシア・ウール・プールという女勇者が登場し、ロマンスの気配を振りまいている。ボサボサの髪の毛と相手に依存する体質から、まるで大型犬のような魅力があるヒロインだ。
さらにヒロインの魅力といえば、川江康太の『鵺の陰陽師』も外せない。同作は「幻妖」と陰陽師の戦いを描く学園バトルマンガだが、まるでラブコメかひと昔前の美少女ゲームのような雰囲気を放っている。
主人公を導く師匠的なポジションとして登場した鵺は、女子高生のような見た目でおおらかな性格だが、実は最強格の幻妖。少なくとも60年以上は生きている謎多き存在だ。
また、学園の「三天女」と称される先輩の周防七咲は、気さくなお姉さんタイプ。そして藤乃代葉は無口でクールな陰陽師のエリートだが、重いしがらみに縛られている一面もあり、その魅力に心を奪われる読者が後を絶たない。次々とヒロイン候補が登場しながらも、誰一人として個性が被らず、むしろ物語のボルテージが上がり続けているのが同作の凄みだろう。
今回紹介したヒロインはいずれも個性豊かであり、誰が次世代の「週刊少年ジャンプ」を担う顔になってもおかしくないように思われる。今のところ新連載のなかで、『カグラバチ』にはヒロインらしき存在が登場していないので、今後このヒロインレースに参戦を果たしてくれることに期待したい。