『ガンダムZZ』ガンダム世界に風穴を開けた「ムーンムーン」とジュドーの覚醒ーー強い印象を残した第14話を検証

『ガンダムZZ』第十四話レビュー

 多くのファンを抱える『機動戦士ガンダム』シリーズにおいて、何かと不遇な『ガンダムZZ』。はたして本当に“見なくていい”作品なのか? 令和のいま、ミリタリー作品に詳しくプラモデルも愛好するライターのしげるが、一話ごとにじっくりレビューしていく。

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【連載第一回】第一話から「総集編」の不穏な幕開け
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第十四話 幻のコロニー(前)

[あらすじ]
 ラビアンローズで修理を受けつつ、航行を続けるアーガマ。そんな中で隕石群に突っ込んだアーガマは、謎のスペースコロニーを発見する。そこは、コロニー開発時代に建造され半ば遺棄されたコロニー、ムーンムーンだった。

 

 ムーンムーンからは、「アーガマとムーンムーンが力を合わせれば良い方向に導かれる」という通信が入り、アーガマは内部に誘導される。しかし着陸したアーガマは原始的な武器を持つ集団に攻撃される。モビルスーツを「巨神」と呼ぶ武装集団は自らをヒカリ族と名乗り、危険な「巨神」を分解することを要求する。ZZガンダムの分離合体機構を利用して巨神を分解したことにしたジュドーたちは、無事にムーンムーン内部に入る許可を得ることに成功するが、ジュドーは謎の人物たちに拉致されてしまう。

 

 ブライトたちが入ったムーンムーンの内部は、まるで古代文明のような状態まで文明が退行していた。内部に進入していたのはブライトたちだけではなく、キャラやゴットン、さらに前回エンドラと合流したビーチャとモンドもヒカリ族に接触していた。ヒカリ族の神殿の外には植物に覆われたキャトルが置かれ、彼らはそのキャトルに向かって礼拝を行う。この接触はグレミーが新造戦艦を運んでくるまでの時間稼ぎのはずだったが、キャラは気まぐれでコロニー内部へ出かけて行ってしまい、ビーチャとモンドは同行を命じられる。

 

 一方、拉致されたジュドーはラサラと名乗る少女と同行していた。そこでコロニー内を観光していたキャラと偶然出くわし、ラサラの手下たちはキャラも拉致してしまう。

 

 ブライトたちは物資補給の引き換えとして、ヒカリ族への忠誠を誓わされていた。ヒカリ族への忠誠を拒否したブライトは、武器を突きつけられて脅され、アーガマを奪われそうになる。ヒカリ族の目的は大型の宇宙船にあり、彼らはそれを使って自分たちの教えを宇宙に広めようとしていた。そこに「キャラがムーンムーン内の反乱者たちに拉致された」という連絡が届く。

 

 その頃、ジュドーとキャラはラサラから「神殿にいる教祖が救世主を待っており、"自然に帰れ"という光の教えを宇宙に広めようとしている」「そのためにアーガマとエンドラを必要としている」という話を聞かされていた。ラサラはヒカリ族が戦争の続く外の世界に出ていくことで、ムーンムーンの平和な生活が脅かされることを危惧していた。

 

 一方、キャラが拉致されたことをビーチャから聞かされたゴットンは、ムーンムーンの人々がキャラを人質にとってエンドラをアーガマに売ろうとしていると誤解する。報復のためガザDにリィナをくくりつけてモビルスーツ隊を出撃させるゴットン。やり口のえげつなさに辟易したビーチャは、R・ジャジャを奪って単身キャラを見つけ出そうとする。

 

 リィナの悲鳴を聞くともなく聞いたジュドーは、その場にいたキャラをおだててリィナの釈放を頼み込む。気を良くしたキャラは、リィナの解放を承諾する。その間にもエンドラのモビルスーツはヒカリ族の神殿を制圧し、モンドはラサラに見つかってしまう。

 

 部下の乗ったガザCを奪ったキャラだが、コクピットに乗ったことで興奮してしまい、ジュドーとの約束を忘れてしまう。一方アーガマからはイーノ、エル、ルーがコアファイター、コアトップ、コアベースの3機に分かれてコロニー内に突入。さらにビーチャが乗ったR・ジャジャまでが乱入し、混乱の中でキャラはR・ジャジャを取り戻す。一方ルーと操縦を交代したジュドーはZZガンダムを合体させ、コロニー内でR・ジャジャとの戦闘を開始する。

 

 ヒカリ族の神殿を守ろうと戦うZZガンダム。対するゴットンはモビルスーツ隊に撤退を命じる。R・ジャジャはZZガンダムのビームサーベルによって破壊され、キャラは意識に直接語りかけてきたジュドーの声によって機体から辛くも脱出する。

 

 戦闘に勝利したジュドーは、ヒカリ族の救世主と崇められる。脱出したところを捕まったキャラの謝罪も受け入れたジュドーは、今まで布越しにしか会話していなかったヒカリ族の族長と初めて対面する。そこにいたのはラサラそっくりながら、「サラサ・ムーン」と名乗る少女だった。

強い印象を残した「ムーンムーン」

 14〜15話は『ZZ』の中でも多くの人に強い印象を残した、ムーンムーンに関するエピソードである。このムーンムーンを題材としたスピンオフとして『機動戦士ムーンガンダム』という作品まで作られているほどで、わずか数話のみ登場した舞台にも関わらず、強いインパクトを残したことが窺える。

 確かに、「コロニー開発時代に作られたものの後に半ば遺棄され、わずかな住人たちが大きく後退した文明の中に引きこもって住んでいる」というアイデアは、なかなか魅力的である。このムーンムーンの設定は、がっちりとメカで固められたガンダム世界の設定に風穴を開けるようなところがあり、その突飛さはSF的な匂いを強く感じさせるものだ。

 そんなアイデアを盛り込んだ回だからか、今回は場面の移り変わりやキャラクターの動きも激しく、また説明することも多い。ただでさえ新設定のコロニーが出てきたのに、さらにその原住民たちが一枚岩ではないことや「光の教え」を伝導するために大型艦を必要としていることなどを視聴者に理解させる必要がある。

 さらに囚われの身となったキャラや、ゴットンに対してネオ・ジオンの兵士待遇を要求しているらしいビーチャなど、陣営を入れ替えてキャラクターたちが立ち回る展開も積み重なっており、その動きもややこしい。よくもまあ、これだけの情報量を短い放送時間に突っ込んだものだと感心してしまうような詰め込み具合だ。

 一方で、時代を感じるのがムーンムーンの人々の服装である。槍を持った戦闘員のデザインといいサラサ、ラサラの服装といい、80年代的なニュアンスが濃く、「文明から離れて生活している人々が、竹の子族的なヒラヒラした服を着ている」というディテールの80年代っぽさはたまらないものがある。

 「コクピットに乗ったら興奮して見境がなくなる」という設定の割には妙に冷静(というか普段と変わらない)ように見えるキャラなど、いろいろと散らかった印象もある14話だが、注目したいのがジュドーがニュータイプとして覚醒しつつある点が描写され始めている点だ。

 14話でのジュドーはリィナの悲鳴を感知して彼女のピンチを知ったり、R・ジャジャが破壊されそうであることをキャラの感覚に直接語りかけることで教えたりと、ニュータイプとしての能力に目覚めつつある。13話のラストで取ってつけたように「ジュドーたちもニュータイプなのかも」という会話が挟まれていたが、早速それを回収しにきたような形だ。

 ニュータイプ能力は人類が宇宙という環境に適応した結果発現するものである。そうである以上、シャングリラの中だけで生活していたジュドーに全くその片鱗がなかったのは、描写としては筋が通っている。コロニーにいた時期は普通のジャンク屋の少年だったジュドーは、アーガマに乗って宇宙空間での戦闘を経験したからこそニュータイプとしての力に目覚めつつあるのだ。

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