『ブルーロック』千切豹馬はなぜ美しいのか 爆発力と気高さを兼ね備えたスピードスターの肖像

『ブルーロック』千切豹馬の魅力

 青い監獄と呼ばれるサッカー施設「ブルーロック」に集められた300人の選手達。世界一のストライカーを目指す為に生き残りを掛けたサバイバルを繰り広げる「史上最もイカれたサッカーマンガ」と呼ばれる『ブルーロック』(原作:金城宗幸/漫画:ノ村優介)。個性に溢れた魅力的な数々のキャラクターの中でも一際目立つ端正なルックスと、他の追随を許さない圧倒的なスピードを持つ選手が千切豹馬だ。

 虎視眈々とトップを狙うブルーロックの面々の中にあって「夢を諦める理由を探しにここに来た」と言い切る千切。彼はブルーロックに召集される1年前に「右膝前十字靭帯断裂」という大怪我を負ってしまっていたのだ。

 スピードという唯一無二の武器を引っ提げ、それまで順風満帆なサッカー人生を歩んでいた千切は、怪我をきっかけに復帰後も従来のプレーを取り戻せず、凡庸な選手に成り下がっていた。そんなサッカーへの熱と自信を失いかけていた千切を再び滾らせたのは、全てを賭けて目の前の試合に挑むライバル、潔世一の姿だった。

【ケガ】という呪縛から解き放たれた瞬間

 自分自身で嵌めていた枷を解き放った千切はピッチ上の誰よりも速く、そのプレースタイルは名実共にスピードキングと呼ぶに相応しい。同じくスピードを武器とする選手と相対した際にも、自分自身の特徴であるロングスプリント能力を活かしたプレーを披露するなど、自分のストロングポイントを最大限発揮できる駆け引きも一級品だ。

 ピッチを誰よりも早く駆け抜けるその目には、甘いマスクとは裏腹にみなぎる闘志をのぞかせる。元々のセンスの上に怪我を乗り越えた人間としての強さが乗っかっている千切はなんとも魅力的な選手として輝きを放っているのだ。

 ここで、とある1人のサッカー選手に触れておきたい。Jリーグ・横浜F・マリノスに所属する宮市亮(2023年10月時点)だ。高校を卒業後、イングランドの名門アーセナルに5年契約の長期オファーを受け入団したことでも有名な選手であり、千切同様、爆発的なスピードを持つプレーヤーだ。しかし度重なる膝の怪我に襲われ、右膝の前十字靭帯の断裂を2回、左膝の前十字靭帯断裂も経験する等、両膝に爆弾を抱えるという苦難が彼を襲ったのだ。引退の2文字が頭を過ぎる中、彼は不屈の闘志で長期に渡るリハビリ期間を終え不死鳥のようにピッチに舞い戻ったのである。

 現実のサッカーシーンと作中の千切の姿がリンクするような感覚を覚えた方も少なくないのではないだろうか。挫折から立ち上がる姿にはいつだって感動と勇気を貰うことができる。

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