ヤングケアラーたちは東日本大震災とどう向き合ったのかーー重い問題を直視する『藍色時刻の君たちは』
といった感じで興味を惹かれながら読んでいると、東日本大震災が起こり、四人の人生は一変する。先に本書のテーマをヤングケアラーと書いたが、東日本大震災がもう一つのテーマになっているのである。作者がこのテーマを扱った理由は、「あとがき」に記されているので、そちらを参照してほしい。
さて、迫真の描写の東日本大震災を経て、物語は11年後の東京に飛ぶ。パニック症を抱えながら看護師をしている小羽は、介護老人保健施設で働いている航平や、パートナーの女性とカレー・ショップを開いた凛子と再会。そして青葉の過去が気になり調べ始める。青葉の過去に関しては、ミステリー的な仕掛けもあり、真実が明らかになったときは驚いた。だがそれ以上に、彼女が三人を気にかけた理由が浮かび上がり、本書のテーマを強めている点に留意すべきだろう。小羽が看護師として接することになるヤングケアラーの件も含め、さまざまな角度からテーマを追究しているのだ。重い問題であり、明確な解決法はない。それでも家族のためという理由で、若者の〝今〟が搾取されないようにしたい。未来の可能性が閉ざされないようにしたい。そんな作者のメッセージが伝わってくるのである。
なお他にも、東日本大震災の被災者たちの複雑な心境、あまり知られていない医療観察法、まだ世間的な認知の低い同性婚など、多くの要素が取り入れられている。繰り返しになるが、フィクションだからこそ、これらの重い問題と向き合えるのだ。気軽に手に取ってほしいとはいえないが、是非とも読んでほしい作品である。