【漫画】とある有名女優の撮影現場に行ったら、やってきたのはソックリさん? 業界裏話を描いた漫画がおもしろい
ーーうえはらさんは漫画家になる前にコピーライターをしており、その際の経験を漫画にしていますね。この内容も実体験がもとになっているのでしょうか。
うえはらけいた(以下うえはら):この話はかなり実体験が元になっています。初めてCM撮影の現場を訪れたとき、スタンドインという仕事は見たことも聞いたこともなかったので驚きました。 主人公が途中で言う「全く本編に残らないのにやってて辛くないのかな」という感想は、まさに自分が当時最初に抱いた感想でした。 後半で上司の方が言う「撮影現場の仕事に無駄なものは1つもない。そこに貴賤はないのだ」という言葉は、撮影現場を何度か経験して、僕が感じた新しい考え方に基づいています。
この作品は「ゾワワの神様」というシリーズの一部なのですが、その半分の内容が実際に僕が経験したエピソードになっています。 もう半分は、誰かから又聞きしたエピソードだったり、社内にまことしやかに伝えられていた教えみたいな物を膨らませたり、あとは完全に自分の創作だったり、色々です。わりと漫画家になってから感じるようになった創作にまつわる持論みたいなものもこっそり混ぜ込んでいます。
ーーなぜコピーライターだったときの話を書こうと思ったのでしょうか。
うえはら:元々「マスナビ」という就活生向けの広告系情報サイトの方から2021年の末頃に連絡を頂いたのが、「ゾワワの神様」を始めたきっかけです。 最初は「就活生に向けて広告業界に興味を持ってもらえるような作品を描いてください」という依頼でした。
しかし、それだけだと狭い話になりそうだったので、より幅広くいろんな方に読んでもらえるようにコピーライター時代に経験した色々な教えやエピソードを、広告業界以外の人にも紹介するような気持ちで描き始めました。
また、コピーライターという仕事が「なんとなくクリエイティブな仕事」というふうに捉えられているにも関わらず、あまり実態を伝えている媒体が無いと思ったので、この仕事のリアルと奥深さみたいな物を伝えていきたい、という気持ちもあります。
ーー漫画の中では、そっくりさんを見てかなり驚いていらっしゃいますが、そんなに似た方がスタンドインをされているのでしょうか。
うえはら:仕事の規模にもよるのですが、予算が潤沢で大規模な撮影になると、きちんとタレントさんの体格に合わせたスタンドインを用意する傾向がありますね!
1度、阿部寛さんのCM撮影に立ち会ったことがあるのですが、ちゃんと阿部さんとほぼ同じ身長の男性がスタンドインをされていて撮影現場に巨大な男性が2人も居たので面白かった記憶があります。
ーーうえはらさんは5年ほどコピーライターをされていたそうですが、一人前のコピーライターになるにはどれくらいかかるのでしょうか。
うえはら:僕は5年でも足りなかったですね!
最後まで、僕の上には先輩コピーライターがいたので、「セカンドコピーライター」としての仕事がほとんどでした。ただ、それはそれなりの大企業だったからというのもあります。
会社によっては1年目からひとり立ちさせられて、完全に1人でコピーライターとしての仕事をさせられる会社もたくさんありますし、むしろそちらの方が一般的です。とはいえ、実力がわかりにくい職種でもあるので、どこからが「一人前か」というのは難しい議論でもあります。 大体3年くらいやれば、ある程度一通りのことは出来るようになる仕事だとは思います。
ーー最後に、コピーライターを目指す方にアドバイスはありますか。
うえはら:たかだか5年で辞めた人間なので、そんな偉そうなことは言えないのですが……。
コピーライターは特に特別な資格も必要ないので、名乗ろうと思えば今日からでもなれる仕事だと思います。なので、コピーライターになることそのものよりも、自分がどんな人の心を動かしたいか、どんな人に向けて広告を作りたいか、を考えることの方が重要なように思います。
場合によっては、「その為ならコピーライターよりも別の仕事の方がいいかも! 」という判断になるかもしれませんね。
ーーうえはらさんの漫画を読んで広告業界に対する興味が湧きました。もっと知りたいです。
うえはら:先月8月に「ゾワワの神様」の単行本が発売になったので、良かったら読んで頂ければ幸いです。 広告業界を題材にした漫画ではありますが、広告業界以外の人にこそ読んで欲しい内容でもあります。