『ガンダムZZ』秀逸なバランスで印象付けられた“主役機”の威力 合体シーンも見応えある第11話を読む

『ガンダムZZ』第十一話レビュー

 多くのファンを抱える『機動戦士ガンダム』シリーズにおいて、何かと不遇な『ガンダムZZ』。はたして本当に“見なくていい”作品なのか? 令和のいま、ミリタリー作品に詳しくプラモデルも愛好するライターのしげるが、一話ごとにじっくりレビューしていく。

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【連載第一回】第一話から「総集編」の不穏な幕開け
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第十一話 始動!ダブル・ゼータ

[あらすじ]
 度重なる敗北の恥を濯ぐべく、マシュマーはハンマ・ハンマに新兵器のシールドを搭載していた。また、同じエンドラに乗り込んでいるキャラ・スーンも、自らが持ち込んだモビルスーツであるR・ジャジャを整備させる。「モビルスーツに乗ると興奮してしまうので、できれば乗りたくない」と話すキャラに呆れるマシュマーは、自分だけでZガンダムを倒してみせると見栄を切ってみせる。

 アーガマ内部では、内通者であるビーチャとモンドを巡ってジュドーとイーノが言い合いをしていた。さらに、シンタとクムはファがアーガマを去ったことに納得がいかず、自分達でシャングリラに向かいファを連れてくることを決意。拘束されているゴットンはそれを聞きつけ、シンタとクムを焚き付けて脱走しようとする。が、逃げる途中でイーノにぶつかり、やむなくゴットンはイーノを人質にして新型コアファイターのコクピットに乗り込む。

 イーノを解放させようとリィナを使った策を用いるアーガマのクルーだが、失敗してゴットンの乗ったコアファイターの動力が入ってしまう。さらに、自分達の悪巧みがバレるのを恐れたビーチャとモンドが格納庫のハッチを解放。逃げたゴットンを追うべくジュドーとルーが出撃する。

 逃走に成功したゴットンだったが、イーノにノーマルスーツを着せようとしたところで隕石に衝突。たまたまアーガマを追って出撃したマシュマーに収容され、エンドラのモビルスーツ部隊へ帰還する。

 アーガマに迫るマシュマーらだが、モビルスーツに乗ったキャラは一人で興奮してしまい、R・ジャジャで暴れ回る。Zガンダムのみで敵を迎撃することになってしまったアーガマは、ラビアンローズに援軍を頼む。

 その頃、イーノはラビアンローズに救助されていた。そこにアーガマからの救援要請が入る。アーガマ付近ではジュドーのZガンダムがマシュマーの部隊を相手に奮戦していたが、マシュマーの新兵器であるシールドを使った攻撃によりZガンダムは苦戦を強いられる。アーガマの敗北を確信したビーチャとモンドはコアファイターで脱出しようとするが、キャラのR・ジャジャに捕獲されそうになる。そこに攻撃を仕掛けるジュドーだったが、R・ジャジャとハンマ・ハンマの2機を相手にすることになり、ハンマ・ハンマのシールドによってZガンダムの頭部を破壊されてしまう。

 Zガンダムから脱出したジュドーは、ビーチャとモンドの乗ったコアファイターを発見。一旦戦場から離脱する。一方ルーはラビアンローズへと向かうが、そこでイーノの乗ったコア・トップとすれ違う。ルーのコア・ベース、そしてイーノのコア・トップと合流したジュドーは、ビーチャとモンドを無理やり機外に放り出し、他の2機とドッキング。最新鋭機のZZガンダムを完成させる。

 ZZガンダムはその凄まじい威力を発揮。高速で移動し、ビームサーベルで隕石をも両断する。重装甲で敵の攻撃を受け付けないZZガンダムに恐れをなし、マシュマーはまたしても撤退。かくして、強力な最新鋭モビルスーツ、ZZガンダムがアーガマの戦力として加わったのだった。

 タイトルにもなっているZZガンダムが、いよいよ初お目見えとなる第11話。前作である『機動戦士Zガンダム』では主役メカの交代は第21話「ゼータの鼓動」からだったので、今回の主役交代はかなり早い。まあ、『Z』の場合は前半の主人公機がガンダムMk-Ⅱという全くの新型機だったので、交代のタイミングが中盤だったのも納得ではある。

 ということなのだが、ZZガンダム登場までの流れはけっこうガチャガチャしており、『ZZ』らしいドタバタ感のあるエピソードでもある。戦闘に至るまでに「ゴットンの脱出→イーノの救出が失敗→ゴットンを追いかけてジュドーとルーが出撃→マシュマーの舞台と遭遇」という順番を踏んでおり、さらにビーチャとモンドがZZガンダムのコアファイターでアーガマから逃げようとしたりと、かなり目まぐるしく状況が入れ替わる。よって、ZZガンダムが登場するのは最後の最後だ。ゴットンが逃げる途中でコアファイターを一機潰しているのはアーガマにとってけっこうな損失だと思うのだが、そこに対する言及も特にない。

 また、ガチャガチャしているといえば、今回初の実践となるキャラ・スーンのガチャガチャ感もすごい。「熱いんだよ〜!」と叫んでは暴れ、「私の魂は宇宙を駆ける魂」と恍惚とした表情でつぶやきながらモビルスーツを操縦するという、かなりエキセントリックなキャラクターである。ジュドーらの立ち位置からも80年代らしい「軽さ」が感じられたが、ほぼ精神異常の領域に足を突っ込んでいるキャラの行動をギャグ混じりで描写する点からも、同じような「軽さ」が感じられる。もっとも、エキセントリックなパイロットは富野監督の作品ではそれほど珍しいものでもないが。

 新型主役機登場回の見せ場は、やはりそれまで主人公が搭乗していた機体とは全く異なる新型機の威力をいかにして印象付けるかという点にある。そこに関しては、この第11話はなかなか秀逸なバランスで表現している。

 まず、冒頭でマシュマーがハンマ・ハンマに新兵器のシールドを装着していることを示し、さらにキャラも見慣れない新型モビルスーツで出撃することを説明する。もうひとつ書けば、ここでキャラが登場するのは赤い機体であるR・ジャジャである。ガンダムシリーズにおいて「赤い敵メカ」は強敵の記号であり、緑色のハンマ・ハンマよりも手強い敵である可能性を視覚的に表現している。

 この2機が、ジュドーの乗ったZガンダムに襲い掛かる。が、秀逸なのはまず一度ハンマ・ハンマ単機とZガンダムが戦い、新型シールドに動揺するシーンを挟んでから、2機がかりで攻撃を仕掛けるという点だ。ジュドーは苦戦しつつも、1対1の勝負ではシールドを持ったハンマ・ハンマに完敗はしていない。後の戦闘でR・ジャジャに組みつかれ、動きを封じられたところに強力な新兵器を浴びせられることで、初めてジュドーのZガンダムは敗北するのである。この流れにより、「ジュドーはマシュマーに一対一では負けておらず、キャラの加勢によって敗北した」という図式が成り立っている。

 この時のZガンダムの敗北も印象的だ。頭部を溶かされるように粉砕されることで、はっきりと視聴者に「これでZガンダムは再起不能になりました」という点を印象付ける。はっきりとZガンダムが使い物にならなくなったことを示したい。しかし、コクピットが破壊されてしまうと主人公であるジュドーも死んでしまう。その条件を満たすのは、やはり「頭部の完全破壊」しかないだろう。

 この一連の戦闘の流れを見ると、ジュドーとZガンダムの格が落ちていない点に気付く。これまでの戦闘ではジュドーは(危なっかしいところがありつつも)マシュマーをうまく退けており、今回いきなり敗北するのは理屈に合わないのである。そこを「ハンマ・ハンマの新武装+"赤い機体"に乗ったエキセントリックなパイロット」とジュドーをぶつけることで、ジュドーとZガンダムが一旦敗退する流れに説得力を持たせている。

 主役メカが交代するには「以前より強力な敵に敗北する」という自然な流れが不可欠であり、主人公の核を落とさずにこの条件をクリアするのは案外難しい。今回は、そんなプロレス的な理屈をマシュマーの新武装とキャラのR・ジャジャでうまくクリアしたのである。

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