『原神』イラストコンテストでも続いた盗作疑惑 「模写」や「トレース」のイラストはどう見抜く?

模写、トレースのイラストはどう見抜く?

著作権に対する意識が希薄な人が多い

  Instagramを開き、「#模写イラスト」というハッシュタグで検索をしてみて欲しい。『原神』をはじめ、『【推しの子】』などの人気作のキャラクターの絵がずらりと出てくる。これらはすべてオリジナルのイラストを模写、というよりトレースしたものである。模写自体は違法ではないし、プロを目指す人が練習用に描くことは多い。

  では、なぜ模写をわざわざネットにUPするのかというと、そのほうが「いいね」がつくからである。学校の美術教育の弊害ともいえるが、人々はお手本そっくりに描ける絵ほど「うまい」と思う傾向にある。その証拠に、模写をUPしている投稿者のInstagramを見ると、最初はオリジナルの絵をUPしているのだ。記者から見ればその絵の方が個性的で、魅力的に映るのだが、そういった個性的な絵はなかなか「いいね」が付かない。

  そこで、投稿者は他に倣って模写イラストをUPしてみたのだろう。すると、けた違いに「いいね」が付いた。かくして、「いいね」中毒に陥った投稿者は、オリジナルの絵を捨ててしまったのであった。以後、Instagramは模写イラストに埋め尽くされている。「いいね」は確かについているのだが、創作者としてそれで楽しいのか、疑問に思う。

  このように、ネット上では模写イラストが日夜多数描かれ、投稿されている状態にある。そうした絵を描く人たちは悪気がなく、模写も立派な創作活動の一環であると考えている人が少なくない。そのため、コンテストの主催者側には対策が求められる。模写は規定に反すること、トレースは却下されることなどを、具体的な事例を入れるなどして呼びかける必要があるだろう。繰り返すようだが、驚くほど著作権の意識が薄い人がネットには多いのだ。

AIの創作物をどうやって見抜くのか

  こうしたコンテストの運営は今後困難になることが予想される。その原因になっているのがAIの登場だ。AIがプロ並みの絵を描けるほど技術が進化しているため、特にデジタルのイラストに関しては、人間が描いたのか、それともAIが描いたのか、判定が極めて難しくなっている。海外ではAIの創作物がコンテストに入賞する例が相次ぎ、関係者を悩ませているが、現状、イラストコンテストは基本的に性善説に基づくしかなくなっているのが現状である。

  『原神』イラストコンテストでも、応募の際に制作途中の下描きなどを提出する規定があったが、それでも騒動が起こってしまった。賞金や賞品が出ないお遊び感覚のコンテストであれば、百歩譲って模写やトレースが紛れ込んでいてもいい……わけがないのだが、いずれにせよ、賞金絡みとなると一層の審査の厳格さが求められるようになるのは間違いない。

  『原神』の公式アカウントは、「今後、コンテストにおける受賞の審査体制を引き続き改善してまいります」とコメントしている。どのような審査体制にするのかは不明だが、例えば制作過程の動画を撮影してもらうなど、余計な手間が生じる可能性もないとはいえない。応募が面倒になればクリエイターの創作意欲が損なわれないか心配だが、そのくらいしか対策の取りようがないのも事実である。

  青少年読書感想文全国コンクールを主催する全国学校図書館協議会が、AIを用いて作成された読書感想文が応募されることを懸念して、来年度の応募要項の改定を行うと発表し、話題になった。AIによって書かれた文章のように、不適切な引用が判明した場合は審査の対象外となるという。しかし、その判定はどうやって行うのだろうか。イラストコンテストも読書感想文も、技術の進化に人間側がまったく追い付いていない状況が浮き彫りになっている。

  大手出版社の漫画賞でも、かつて何度か盗作による受賞取り消しがあったし、漫画家にトレース疑惑が生じて連載が打ち切りになった例もあった。盗作との戦いはいたちごっこが続く状態だ。今回の『原神』のイラスコンテストの事件を機に、創作とは何なのか、そしてコンテストの在り方などを改めて考え直す必要がありそうである。

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