”日本一買いにくい”ビジネス書『女子大生、オナホを売る。』は、なぜバズった? 著者リコピンが”マーケ的”な視点から分析
専業主婦になろうと思い、マーケティングを学んだ
――武器商人、ですか?
リコピン:ええ。幼稚園の頃、戦いゴッコが流行って、みんなで新聞紙をまるめて剣にして戦っていたんですね。でも、私は運動神経がよくなかったので、裏方に回って、武器をつくって渡す仕事をしていた。
ただ剣が主軸の戦いだから、どうしても接近戦になり、運動神経が高い子ばかりが有利でした。それがどうしても納得いかなくて。ドラクエとかみていると弓とか魔法とか中距離系の武器があると、戦いに幅も出るし、多少、運動が苦手な子でも活躍できるじゃないですか。
「よし、中距離系の武器を供給しよう!」と槍や投矢をつくったら、めちゃくちゃ人気になって「俺も欲しい」「私も」と声がかかりまして。しかも戦いに参加できる人が増えて、戦いゴッコそのものもめちゃくちゃ盛り上がったんですよ。
――新たな武器を開発、市場に出すことで戦局を変えたわけですね。
リコピン:はい。ただ盛り上がり過ぎて、新聞紙の矢が顔にあたる子が増えてしまいました。「あぶないからやめなさい」と先生や保護者の方から怒られ、休戦になったんです。それでも得たものは大きく「人と違うことをやるとおもしろいことが起きるのだな」と意識するようになりました。
そのときから、人と違う経験ができる場には、できるだけ飛び込もうと決めて生きてきましたね。本にも書きましたが、学生時代に焼き立ての鮭をおかずに、ホカホカの白米を食べたくて、炊飯器と七輪を校内に持ち込んで生鮭を焼いたのもその延長です。友人たちも大歓迎してくれて、一緒に白米を食べたのはいい思い出です。
ただ、火災報知器が作動して、停学にはなりました。
――強いですね。唸ったのが、その停学をきっかけに趣味でつくった音楽をオンラインで販売して、お金を稼いだことです。
リコピン:音楽は子供の頃からピアノやバイオリンを習い、中学でもオーケストラ部、高校でも軽音部に入るなど、ずっと続けていたんですね。
一方で小学校高学年の頃、家にWi-fiが通り、初音ミクに衝撃を受けて、DTM(デスクトップミュージック=PCでの音楽を作成・編集)をはじめていました。
停学になったとき、自宅謹慎でバイトにも行けなくなったので、最初はメルカリで不用品を売って稼いでいたのですが、売りつくしてしまい、「それならば」と作り貯めていたDTM音源をインターネットで販売してみたら、少し売れちゃって。
しかも、楽曲のタイトルや解説、サムネイルなどを工夫すると、売れ行きがよくなる。元々、小学生の頃には、ブログも書いて、ランキングで1位になったことなどもあり、「手を動かして工夫してインターネットでなにかする」のは性に合っていると感じていました。
――その流れで、高校を出たあと、明治大学の商学部に進んで、マーケティングを学ばれたのですか?
リコピン:いやあ。実は違うんですよ。恥ずかしながら明大に進学したきっかけは、当時つきあっていた彼氏です。
私が通う高校は進学校だったのですが、音楽に没頭しすぎて、勉強をしなくなっていたんですね。私だけ偏差値24になっちゃっていた。
当時つきあっていた彼氏が、音楽の才能あふれる人で「学校を出たら音楽の専門学校に行く」と言っていたので、私も大学なんていいやと思っていたのです。
ところが、高3になったら急に彼が「俺、大学行くわ。立教」と言い始めちゃって。当時は全面的に彼氏を尊敬していたので「あ、じゃあ、私も大学行く。私もMARCHに行く。家から行きやすいから明治だ!」と。
――おお。なかなかですね(笑)。商学部を選んだ理由は?
リコピン:人の行動心理みたいなものに昔から興味があったからですね。思春期くらいになると学校で派閥ができるじゃないですか。ただその派閥の構成が、ちょっとしたイベントごとに変わったり、急に仲違いしたり、また仲良くなったりと不思議な動きをする。
人の判断って決して合理的ではなく「理由にならない行動」がままある。その不思議さに興味があったんです。
消費もまさにそうですよね。コンビニでお茶を選んだけれど、十数種もある中でその1本を選んだ理由は、別段、説明できなかったりする。あるいは「Tシャツを買おう」と思って入った店を出る頃に、なぜかパンツを購入している自分がいたりする。
――社会学や心理学的な視点で、消費行動に興味を抱いていたのですね。そして明大時代に、インターンシップで入った会社でWebマーケを学び、今につながる。
リコピン:いや~。これも恥ずかしながら、そんなにきれいにはつながっていなくて。
実は大学受験のきっかけになった彼氏と別れて、「今後の人生どうしよう…」と悩んだことがあったんです。私は協調性もないし、たぶん会社でうまくやっていけるタイプじゃないと思っていました。
「それならお金持ちと結婚して、専業主婦になろう!」と決めたんですね。
――ほう。……え? なぜ、そこからインターンに?
リコピン:「お金持ちといえば、商社マンだな」と、短絡的な考えにまず至りました(笑)。
そこでまずは大手総合商社に潜り込む必要があります。しかし、就活で大手総合商社は狭き門。周囲をみても就活がうまくいく人はみな、ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)がものすごかった。「サークル長でがんばった」とか「部活で全国大会に出た」とか、私には何もなかった。
それなら、長期インターンで何かしらの成果を出せば、ガクチカとして差別化が図れるのでは、と考えたんです。そして商社に入って、お金持ちと出会い、結婚して、遊んで暮らしていけるだろうと。
――ところが、そこでマーケティングの世界にどっぷりハマったわけですね。
リコピン:はい。しかもオナホにたどり着くとは、当時は思いもしませんでした(笑)。
(後編に続く)
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