【推しの子】アクアの心を掴むのは? 複雑すぎる”恋愛模様”を読み解く

恋愛漫画としての【推しの子】

※本稿は【推しの子】のネタバレを含みます。

 転生ものとしての側面もありつつ、芸能界をリアルに生々しく描き、ときにサスペンス的な展開も描かれる。そんなジャンルレスな作品として様々な層から支持されている【推しの子】。

 本作を語るうえでラブコメディとしての側面も欠かすことはできないものであろう。B小町・アイ殺害の真相解明と並行しながら、登場人物の恋模様が展開されていく。本稿ではどんなキャラクターが恋愛的感情を抱いていたか振り返り、今後の展開を推測していきたい。

一途な恋心を抱く、有馬かな

 作中でアクアに恋心を抱く筆頭なのは“10秒で泣ける天才子役”と謳われた女優・有馬かなが挙げられる。

 2巻・第十六話「演技力」で描かれたドラマ『今日あま』の撮影にて、有馬はアクアと共に演技をする。有馬が現場の空気を乱さないよう自身の演技力をセーブしながら演じていたこと、有馬の天才子役と謳われたあとの苦労をアクアは知り、彼はドラマの撮影を通じて有馬のために尽力する。

 撮影のクライマックス、有馬はアクアの気遣いに気づいたからか、彼女は“主人公に恋に落ちた乙女の顔”を見せた。その表情が不意に表れたものなのか、はたまたドラマ用の演技だったのか。その真意はわからない。

 ただ『今日あま』の撮影を皮切りに、有馬のアクアに対する態度は徐々に変化していく。たとえば「恋愛リアリティショー編」でアクアが「劇団ララライ」所属の若きエース・黒川あかねと交際することになると「うるさい気安く話しかけないで/アンタは黒川あかねとヨロシクやってなさいよ/このスケコマシ三太夫が」と不機嫌な顔を浮かべる。

 8巻・第七十三話「スマート」では有馬がアクアと待ち合わせすることとなり、アクアとのチャットメッセージでは平静を装いつつ、「どういう服がアイツの好み!?」との思いで様々なコーディネートを披露しつつ2時間以上着る服に悩んでいる。

 11巻ではとある男性に対し「そいつはですね!私なんて全然気にしてない風なんですよいつも‼/でもふとたまに優しくしてきて!私を勘違いさせて!/忘れよう忘れようと思って頑張ってるのに全然忘れられなくて!」と“好きな人”に対する心情を叫ぶ有馬の姿が描かれた。

 作中でアクア、もしくは“好きな人”に対し一途な想いを抱いてきた有馬。嘘や虚構、打算が多く描かれる本作において、一途な恋心を抱く有馬の純粋さはひときわ輝くものであろう。

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