『白鳥麗子でございます!』著者・鈴木由美子が描いた強烈な女性像 現代に通じるメッセージを読む

『白鳥麗子』鈴木由美子を再読

「背伸びをする自分」から「ありのままの自分」へ

 鈴木由美子の作品が失速し始めたのは、ギャル文化が下火になっていった頃だったと思う。本来の自分と真逆の誰かになろうと鎧で身を固めるよりも、素材を活かす流れになってきたからだ。それを言語化して広く伝えたのが、2003年にリリースされた、SMAPの『世界に一つだけの花』だった。

 人と競うことはない、人は誰でもオンリーワンなのだ、という歌詞は多くの人々の心に深く沁みて、背伸びをするよりも「自分探し」に重きをおく風潮がもてはやされるようになった。同時期に、赤文字雑誌『CanCam』(小学館)が一世を風靡。ステレオタイプやレッテルから解放されたいと頑張ったけれど、多くがモテから遠ざかっていくことにジレンマを抱えていた人たちのニーズに見事にハマった。自分の解放から、自分を尊重しつつも異性に求められることの心地よさと安心感を求めるようになったのだろう。

 この「自分探し」や「自分の尊重」は形を変え、ひとつのジャンルと化し、TikTokでバズった自己肯定感を高める応援ソングの『可愛くてごめん』の世界観につながっていっていると筆者は見ている。

 大人になって改めて鈴木由美子の作品を読むと、奇抜な世界観の中に、どれほど多くの大切なメッセージが込められていたのかが良くわかる。それは時代が変わってもきっと変わらないものだろう。今一度手に取ってみてほしい。

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