カラテカ入江、清掃会社「ピカピカ」代表としての現在地 闇営業騒動から4年を経て気づく「味方」の大切さ

カラテカ入江氏インタビュー

ーー先輩方に助けられた話も多く出てきます。芸人の世界の先輩・後輩関係に、仕事の関係以上の独特なものを感じました。 

入江:僕は19歳から芸能界にいて、ありがたいことにたくさんの先輩に可愛がってもらいました。確かに独特だとは思いますよ、50歳を超えてもご飯をご馳走になりますから。そういう芸人独特の先輩・後輩の関係性がありますよね。 

 うまく言葉で言い表せないですけど、みなさんとにかくいろんなことにアツいんです。失敗をしてしまった僕に対しても今でも応援していただいています。僕を擁護するのってリスクがあると思うんです。でもそういうのは関係なく先輩方に支えていただいてます。本当に言葉では言い尽くせないほど感謝しています。そんな先輩の皆さんに恩返しをする意味でもまずは自分の会社をしっかりと成長させていくことが大切だと考えています。 

ーー芸人の方たちとは今ではどのような関係性なのですか? 

入江:ありがたいことに芸人の集まりに呼んでくれたりしてくれて、とても恵まれていると思います。芸人をしている仲間を見ていると「すごくいい仕事、楽しい仕事をさせてもらってたんだな」と改めて感じますね。 

ーー先輩方からかけてもらった言葉で覚えていることはありますか? 

入江:今田(耕司)さんはずっと変わらず声をかけてくださるので、いつもありがたいと思います。清掃の仕事で伺うことがあるんですけど、今田さんのご自宅はホコリひとつ落ちてないんですよ。「どこを掃除するんだろう?」と思うんですけど、それでも清掃を頼んでくれるんです。兄さんも清掃のプロなので「『ピカピカ』と名乗ってるなら、ここの清掃はこうしたほうがええで」とか、厳しく意見を言ってくれます。 

ーー現在、お笑いという仕事に対してどういう思いがありますか? 

入江:前よりも俯瞰して見られるようになりました。最近は同期のガリットチュウやカリカのライブに行って、普通にお客さんとして楽しんでいます。芸人の頃はどこかでライバル意識があって、笑いながらも「ウケてんな…」と焦っていたんですけど、今は純粋に面白いと思いますね。あと見ていて思うのは、芸人はやっぱり楽しそうですね。みんな生き生きしています。 

ーーライブを見ていて、芸人に戻りたいという気持ちは生まれませんか? 

入江:もちろんあります。でも、自分には、今やるべきことがあるので。 

ーー今は清掃のお仕事が一番大切だということですね。 

お客さんを笑顔にする 清掃業と芸人の目的は同じ

ーーセカンドキャリアとして清掃業を選んだのはなぜですか? 

入江:「なんで清掃業なんですか」とよく聞かれるんですが、特に理由はないんですよ。向いてるかもしれないと思ったのは事実ですけど、とりあえず何かやらなきゃいけないと思った時に、色んなことが重なり清掃業になったという感じです。 

ーー本書では清掃を「禊」と思われていて悔しかったと書かれていますね。 

入江:はい。清掃業をやってることを可哀想に思われていることがあるけど、心の中では「芸人から清掃に変わっただけじゃん」という気持ちなんです。そのことが伝わらないのは歯がゆいです。自分がそう言うのは、おこがましいことかもしれないですけれど、「清掃業は楽しい」ということを伝えていけたらいいなと思っています。 

ーー入江さんの会社「ピカピカ」はどんな理念があるのですか? 

入江:やりたいことを叶えられる会社にしたいと思っています。スタッフは清掃業でリスタートしたいという気持ちで来てくれている人ばかりですので。 

 時に、スタッフから彼女の話とか家庭の相談をされたりもします。だから、普通の会社じゃないですよ、というのは最初の面接の時にも伝えています。 


ーーそういう入江さんならではの「可愛がられる力」みたいなものを大切にされているんですね。 

入江:清掃業もサービス業のひとつで、自分で営業しないといけない。だから喋っていて楽しい人に仕事はくると思うんです。もちろん技術があっての話ですけどね。 

ーー会社を運営していて嬉しいことはありますか? 

入江:今はスタッフが成長していく姿を見るのがすごく嬉しいです。今まで2人で清掃に行っていたのが1人でお客さんを任せられるようになったり。月に1回はみんなでお酒を飲むんですけど、そこでみんなで話すのも楽しいですね。 

ーー社会には子どもの頃からの夢を諦めてしまったり、何かの失敗で信用を失ってしまったりした人はたくさんいると思います。最後に、そういった方々へメッセージをいただけますか。 

入江:失意のどん底にいるような時って「自分はひとりきりだ」と感じると思うんです。それに、人に怒られるのが怖くて逃げたいと思ってしまうかもしれません。でも、絶対に味方はいるんです。だからそういう人を見つけて意見を聞いたほうがいいですね。力を貸してくれるならば甘えても良いと思うんですよ。自分の失敗を受け入れて向き合うことで、前を向いて生きていけるようになりますから。 

 正直に言うと、当時は相方と喋るのもとてもイヤだった時がありました。なんでこんなに苦しいのに、そこまで厳しいことを言うんだろうって。でも今になって思うと、それが本当の優しさだとわかる。周りにいてくれる味方の意見に耳を傾けていれば、道は開けると思います。


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