おいでやす小田 なぜモノを捨てられない? 初エッセイから見えた買い替えられない幸福論

おいでやす小田インタビュー

 R-1グランプリで5年連続決勝進出、2020年のM-1グランプリでは準優勝など数々の快挙を成し遂げ、注目の的になっている芸人・おいでやす小田。近年はバラエティのほか、テレビドラマで俳優として活躍するなど、活動の場が拡大している。

 そんな小田が、11月2日に初エッセイ『僕はどうしても捨てられない。』(ヨシモトブックス)を上梓。撮りおろしの写真とともに、小田の衝撃的な生活を垣間見ることができる本に仕上がっている。掲載されている写真は、ボロボロになったガス式炊飯器から、糸がほつれてカビが生えているにもかかわらず10年以上愛用するタオル……などなど。

 

 周囲からどんなに「捨てろ」と言われても、一途にモノを愛用し続ける小田の哲学とは何か。その本質に迫ってみた。 

なぜ、モノを捨てられない?

――初めてのエッセイ刊行おめでとうございます。『僕はどうしても捨てられない。』は、小田さんが捨てられないモノについて、写真を交えて解説した異色の本ですね。

小田:もともと貧乏性でモノが捨てられない性格だったんですが、自分はどうやら周りよりもそれが極端で、変だぞと気づき出したんです。そんなことを話していたら、『ダウンタウンDX』や『ホンマでっか!?TV』などで、貧乏性芸人とか、節約芸人がドケチエピソードを披露する企画に呼ばれることが増えたんですよ。

――番組での反応はいかがでしたか?

小田:僕の生活を話すだけでウケたんです。『ダウンタウンDX』でも話したんですが、15年前に大阪のボロアパートに住んでいたとき、餃子の王将で天津飯を食べたんですね。そのとき、餃子が2個余ったんですが、持ち帰り用の箱代がもったいなくて、餃子を握って持ち帰ったんですよ。箱代は10円やったんですけど、餃子2個のために、餃子2人前(12個)が入る箱を買うのはどうかなあ……と、さんざん悩んだ結果なんですけれどね。

――それは、なかなかですね(笑)。捨てられない性格について話したことで、何か変化はありましたか?

小田:ドン引きされることもありましたが、話をするようになったら意外にも共感の声がめっちゃ増えたんですよ。僕自身は今まで通りの生活をしているだけなんですけど、前よりも堂々と自分の性格を主張できるようになったかもしれませんね。

――私もモノを捨てられないタイプなので、共感できるエピソードがたくさんありました。

小田:共感していただけたのは嬉しい誤算でしたね。もしかすると、どこか恥ずかしくて、口にできなかった人も少なくなかったんじゃないかと、僕自身が勉強になりました。そんなことを考えていたら、マネージャーから本にしないかと話があって。トントン拍子に出版につながったのが、今回の本ですね。

なくなってから価値に気づくこともある

――小田さんご自身が、モノを捨てられない性格だと気づいたのはいつでしょうか?

小田:気づいたタイミングは……いつやろなあ。それこそ、テレビの企画の遥か前ですね。小学校のときに集めていたキン消しとかビックリマンシールは、今も持っていますし、昔から捨てられない性格であることは確かだと思います。

――キン消しやビックリマンシール、今となっては貴重でプレミアがついていそうですね。

小田:小学生の頃、大事にしていたビックリマンシールの本が勝手に捨てられたことがありました。たぶんおばあちゃんが捨てたんですけど、なんでしっかり管理しとかんかったんやろうと、猛烈に後悔した記憶があります。モノって、捨ててスッキリすることもあるけど、捨てたことを一生後悔することもあるじゃないですか。特に、なくなってから価値に気づくことはよくある。だから、思い入れが深いものは迷ってしまいますね。

――今までで、捨ててしまって後悔したモノはありますか?

小田:16~20歳の頃に履いていたバスケットシューズですね。お金を出して買い戻せるモノだったら後悔しないけれど、10代のその瞬間をともにした思い出の品って、絶対に手に入らないんですよ。履いている写真は残っているので、写真を見たら余計に、なんで捨ててしまったんやろうと後悔してしまうんですよね。

7年に一度読む漫画、永遠に返納されない熊手……

――本に載っているモノの中で、「これだけは絶対に捨てられないモノ」を挙げるとすれば何でしょうか?

小田:ほとんど全部、捨てられないんですけれどね(笑)。そもそも、ここで紹介したモノは、取捨選択の末に生き残っているモノですから、どれも大事なんです。財布と目薬ではジャンルが違うじゃないですか。思い入れが入ってくるとまた別枠になるし……でも、どうしても選べって言われたら、一番はお皿かもしれないです。子どもの頃から使っていますから。愛用している期間が長ければ長いほど捨てられない、骨董品のようなゾーンに突入してると思う。ここまで捨てなかったんだから、もう一生捨てられないですよ。

――そういう意味では、子どもの頃に買った漫画も思い入れが深そうですね。

小田:そうですね。あだち充さんの漫画が好きで、『タッチ』『みゆき』『虹色とうがらし』とか、ほとんど持っています。他にも『スラムダンク』『ピンポン』『北斗の拳』など、思い出深い漫画は多いですね。漫画って、7年に1回くらいは読み返すんですよ。まったく予期せぬタイミングで。だから、なおさら捨てられません。引っ越しの荷物整理のタイミングで読みふけることもありますし、テレビで「北斗の拳が面白い!」と誰かが言っていたら、つい読み返したくなっちゃうんです。

――本書に掲載していないモノで、捨てられないモノがあれば教えてください。

小田:商売繁盛の熊手ですかね。小さいもので3~4年前に買ったんですけど、もうボロボロになっています。こういう縁起物って、返しに行かなあかんのですよね? 新宿の花園神社で買ったんですけど、それが面倒くさくて、そのままななんです。

――それって、吉本本社のすごい近くじゃないですか(笑)。

小田:そうそう。いつも返そうとは思ってるんですけど、事務所に来てから、「あ、今日持ってきてない」というパターンを50回くらい繰り返してるんです(笑)。

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