アニメ化で注目の『虚構推理』、ミステリとしての斬新さとは? 文芸評論家に聞く

『虚構推理』ミステリとしての新しさ

 テレビアニメ『虚構推理 Season2』(TOKYO MX)が2023年1月8日より放送スタートし、人気を博している。同作は城平京によるミステリ小説『虚構推理』をアニメ化したもので、“怪異”たちの引き起こすミステリアスな事件に、“知恵の神”岩永琴子と、不死身の身体とある能力を持つ恋人・桜川九郎が立ち向かう物語だ。

 魅力的なキャラクターと斬新な設定が印象的な本作は、ミステリとしてどんな魅力を持っているのか。文芸評論家の円堂都司昭氏に、原作『虚構推理』の独創性について話を聞いた。

「ミステリ界では2010年代の後半くらいから特殊設定ミステリが流行しました。特殊設定ミステリは、心霊現象や超能力といった怪異、あるいは高度に発達したロボットやヴァーチャル・リアリティといったSF的設定など、非現実的な要素を盛り込んだミステリで、近年の代表的な作品としては今村昌弘『屍人荘の殺人』や斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』などが挙げられます。ドラマ化されて話題になった相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』も、特殊設定を意識した作品でした。こうした流行の先駆けとなったのが、2011年に講談社ノベルスから刊行された城平京の『虚構推理 鋼人七瀬』でした。『虚構推理 鋼人七瀬』は、2012年に第12回本格ミステリ大賞小説部門を受賞し、話題となりました。同賞はミステリに携わる作家や書評家の投票で決定するのですが、そうした玄人たちに本作が評価されたことは、その後のミステリ界に少なからず影響を与えたはずです」

 『虚構推理 鋼人七瀬』の世界では“怪異”が存在するという特殊設定があるが、それだけに止まらない複雑な構造が評価されたと、円堂氏は続ける。

「特殊設定ミステリは幽霊や妖怪が出てくるから、謎解きの際になんでもありになってしまいそうですが、むしろどのようなルールのもとでそれらが発生するのか、どんな現象なのか、作中できっちりルールが設定されていて、読者は与えられた手がかりをもとに論理的に推理できるように組み立てられている作品が評価されています。しかし『虚構推理』はそのタイトル通り、虚構の推理によって人々を納得させることで問題を解決します。特殊設定があるうえで、さらに通常のミステリとは異なる複雑な構造にしたことが、本作の面白さでした。『虚構推理』はシリーズ化されましたが、以後の作品でも、問題が解決するなら真実より虚構を優先するのは、基本姿勢になっています」

 また、「真実よりも説得力のある嘘」を組み立てて、ネットの住民たちを信じさせようとする第一作の物語は、時代の風潮ともマッチしていたという。

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