【SNS漫画まとめ】悪役レスラーの美少女、夏休みに髪を伸ばした男子……優しくなれる“学園漫画”をチェック

 プロの漫画家やデビューを目指すクリエイターがSNSに作品を投稿し、多くの読者を獲得するケースが増えている。リアルサウンドブックでは、そのなかから読み応えのある力作をピックアップし、作者のインタビューとともに紹介してきた。本稿では、なかでも反響の大きかった「学園漫画」にフォーカス。多くの学校が冬休みを迎えているいま、勇気がもらえて、少し優しくなれる作品たちをあらためてチェックしたい。

髪を伸ばした男子生徒、クラスの反応は……

 金田力金男さんがTwitterで公開した『夏休み明けに髪を伸ばしてきた男子生徒と、そのクラスメイトたちの話』は、読者の心を優しくえぐる良作だ。

 舞台はタイトルの通り、夏休み明けの高校。“男のくせに”髪を長く伸ばしてきた男子生徒・オダワラは、全校集会中に教師に連れていかれ、生徒指導を受けるもなぜか無罪放免となる。同級生のトツカはこのことに必要以上に突っかかり、オダワラに“校則違反”だと詰め寄る。トツカはなぜオダワラを許せないのか、オダワラはなぜ髪を伸ばしているのか。それぞれに切実な理由があるなかで、その衝突を止められるのは――。

 「らしさ」や「こうあるべき」という圧力を乗り越え、個人個人が互いに理解し合い、尊重することの大切さと、難しさ。外形的な事実だけでなく、その意図するところを考えられるかどうか。思慮深く行動しなければ、と思わされる作品だ。

持病でポーチが手放せない少年、なぜ体育祭でヒーローに?


 

 多様性についての理解が進むなかでも、「人との違い」が個性と受け取られず、コンプレックスとして人を悩ませることは少なくない。「びっくりした」さんが制作した『ポーチが取れない少年の話』は、そんな人との違いが個性として認められる瞬間を描いた作品だ。

 男子中学生の安井は持病のため、救急セットが入ったポーチを常に身につけている。それが周囲からは奇異の目で見られ、“ポーチ君”というニックネームでからかわれていた。そんな安井は体育祭で唯一出場できる徒競走にエントリーするが、生徒会副会長や体育祭実行委員長など、学校の人気者たちが並ぶグループで走ることに。全校生徒の注目が集まるなか、安井は“自分だけの”走りを披露して――。

 現実にあり得る問題を描きながら、読後に優しい気持ちになれる本作。誰もがヒーローになれる場面があることを頭に置いておきたい。

クラスの美少女が悪玉プロレスラーだった話


 牧彰久さんによる学園漫画『クラスの美少女が悪玉プロレスラーだった話』は、タイトルの通り、ヒールの覆面レスラーの顔を持つヒロインが登場する作品だ。一風変わった設定だが、王道感のある展開に胸が熱くなる。

 男子高校生・伊吹はクラスメイトからパシリにされているが、“嫌われる”ことに対するトラウマから、断ることができずにいた。そんなある日、偶然クラスメイトの少女・霧江が覆面レスラーであることを知る。もともとプロレスファンだった伊吹は、彼女の試合に足を運ぶようになり、ヒールとしてブーイングを受けながら果敢に戦う霧江の姿を見て、徐々に変化していく――。

 周囲に歩調を合わせることも重要だが、嫌われる覚悟で「守る」べきものもあるかもしれない。本当に大切なことは何か、考えさせてくれる良質なエンタメ作品だ。

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