TVアニメ化迫る『怪獣8号』ヒットの要因は? 『ウルトラQ』『ARMS』『エヴァ』など人気作に通ずる絶妙のハイブリッド

『怪獣8号』ヒットの要因を分析

 漫画アプリ「少年ジャンプ+」で連載中の人気作『怪獣8号』(松本直也)のテレビアニメ版が、2024年に放送されることが決定した。多くのヒットアニメを手がけてきたProduction I.Gが制作を担当するほか、庵野秀明が代表を務めるスタジオカラーが怪獣デザインを行なうという発表も話題になっている。

 『怪獣8号』は漫画好きには言わずと知れたヒット作だが、アプリ連載ということもあり、雑誌と単行本を中心に漫画を楽しんでいる層と話していると、「乗り遅れてしまった」という人も少なくない。本稿ではあらためて、オールドファンにも伝わるよう過去の人気作と照らし合わせながら本作の魅力、ヒットの要因を考えたい。

 舞台は、怪獣に人々の生活が脅かされている「怪獣大国」の日本。幼馴染でいまや“日本防衛隊”のエースになった亜白ミナと交わした「二人で怪獣を全滅させよう」という約束を果たすことができないまま、32歳になった日比野カフカは、怪獣の死体を解体する業者として、鬱屈した日々を送っていた。日本防衛隊の入隊資格が変更され、年齢条件が引き上げられたことを知り、最後の望みをかけて試験を受ける決意をするカフカ。そんななか、小型の怪獣が体内に侵入し、怪獣化する能力を持ってしまいーー。

 人々の恐怖の対象である「怪獣」をその身に宿し、日本防衛隊の戦力として活躍していくカフカ。毒をもって毒を制すーー怪獣の力で怪獣を滅するカフカの存在は『デビルマン』的でもあり、科学的な装備を用いた“巨大ヒーロー不在”の怪獣退治は『ウルトラQ』的な興奮やカタルシスも備える。

 また、カフカのように怪獣化の能力を得た人間は前例がなく、基本的には怪獣からできた装備に適合する個性的な隊員たちが、科学的なプロセスでそれを活用している。このあたりは皆川亮二の傑作『ARMS』に通じる面白さがあり、装備とのシンクロ率等によって威力が変わり、“暴走”の危険性も孕むスリリングな設定は『新世紀エヴァンゲリオン』的とも言える。

 当初こそ、ヒロインとの約束を果たすために奮闘する“おじさんヒーロー”の物語という牧歌的なイメージもあった『怪獣8号』だが、知性を持った怪獣が登場し、戦いが激化していくなかで、人々の幸福が踏み躙られるようなシビアな描写も増えてきた。その意味では、謎多き存在によって理不尽な殺戮が行われる『GANTZ』のような作品に熱中してきた読者も、手に汗を握ることができるだろう。

 アニメ化において、前出の『エヴァンゲリオン』を手がけたスタジオカラーが怪獣デザインを担当することで、ビジュアル面での魅力がさらに強化されそうだ。古今のヒット作でフックになってきた要素を多く持ち、スマホ時代にも読みやすい作画も効いた『怪獣8号』のヒットは約束されたものであり、アニメ化でさらなるブレイクを果たすだろう。単行本は既刊8巻、「ジャンプ+」上では全話初回無料で読むことができるので、「実はまだ原作を読んだことがない」という人はチェックしておきたい。

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