『東京卍リベンジャーズ』最終回は“打ち切りエンド”でも“蛇足”でもなかった 晴れやかな結末に納得の理由

『東リベ』の最終回に納得した理由

 人気漫画『東京卍リベンジャーズ』が本日、11月16日発売の「週刊少年マガジン」51号で完結した。アニメ、映画も大ヒットを記録し、多くのコラボレーション企画で社会現象を巻き起こした、花垣武道(以下、タケミチ)と愛すべき仲間たちの5年半に及ぶ物語。その最終回に向けて加速度的に展開していった“リベンジ”に、読者からは賛否の声が上がっていたが、“リベンジャーズ”というタイトルに引きつけて考えると、納得感のある美しいエンディングだった。

※以下、最終回のネタバレを含みます。

 エンディングについての具体的な記述は避けるが、「(劇的に状況が好転していった最終盤の展開は)死にゆくタケミチの走馬灯だった」のような悲しい仕掛けはなく、ストレートに爽やかなハッピーエンドだった。

 上記の通り、前回までのスピーディな展開に「打ち切りエンド」に近い感覚を持った読者が一定数見られる一方で、逆に「稀咲鉄太との争いが“決着”して以降は蛇足だ」と考える読者の声もあり、SNSでは議論が紛糾していたが、最終回に合わせて掲載されたインタビューで、作者の和久井健氏自身が「『リベンジャー』じゃなくて『リベンジャーズ』ってタイトルに決めたときから、『タケミチとマイキーで最後のリベンジをする』って展開は考えてました」と語り、エンディングについては「『血のハロウィン』くらいのときには決まっていた」と明かしている。

 「血のハロウィン」編が描かれたのはコミックス5~8巻で、話数にすると36話からスタートしており、まだ序盤といえる時期だ。当時からの構想に合わせてエンディングまで描き切ったとすれば、これだけの人気作で「打ち切り」はありえないのは当然のこと、「(蛇足になり得る)引き伸ばし」でもない。コミックスを読み返していると、これが“後付け”ではないと納得できる。

 今年2月に公開した当サイト記事「『東京卍リベンジャーズ』最終章は蛇足ではない 『“オレたち”のリベンジ』に込められた意味を考察」で、漫画編集者・評論家の島田一志氏も指摘していたように、「リベンジャーズ」という複数形のタイトルからして、タケミチだけが“過去に戻ってかつての恋人・橘日向の死を回避する”という目的を果たしても、大団円とはならない。第242話の時点で、タケミチは仲間たちに向かって「“オレたち”のリベンジだ」と言い放っており、理想のエンディングに向けての道のりは、「引き伸ばし」どころか、むしろタイトだと思わせられる。

 それでは、最終盤の展開は「打ち切り」に見えるほどタイトすぎただろうか。エンディングの形は早々に決まっていたとして、答え合わせのようにすべてのことがうまくいく過程を、和久井氏は詳細には描かなかった。タケミチと、彼に心を救われたマイキーが、理想のトーマンをどう築き上げ、不幸になり得た仲間たちをどう救っていくかーーその物語も確かに、カタルシスにあふれた楽しいものになりそうだ。しかし、読者は二人がどんな苦難にも負けず、明確な目的を持って正しい道を選び続けるだろうことを知っている。その道程を詳細に描き綴るのは、それこそ蛇足になるのではないか。

 エンディングに賛否の議論が生まれるのは、多くの人がそれぞれに思い入れを持つヒット作だからこそ。個人的には、バッドエンドに抗い続けたタケミチがリベンジを達成し、仲間とともに晴れやかな姿を見せてくれたことは、5年半、作品を追いかけ続けたファンへのご褒美のように思えた。アニメ、実写映画、展覧会にスピンオフ作品と、まだまだ続く『東リベ』のこの先を楽しみにしたい。

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