奥華子「自分の命の価値についてすごく考えさせられました」小説『さよならの向う側』を読んで

奥華子が語る『さよならの向う側』

過去以外は全部が変わりゆくもの

 物語を読み進める中で浮かび上がってくる“伝えることの大切さ”という普遍的なテーマは、幅広い年代のリスナーから長年愛され続けている奥華子の楽曲にも重なる。

「私の曲は、“失ってみて初めて分かる大切さ”をテーマにした失恋ソングが多いんです。だから、『あのとき何で気づかなかったんだろう』『なんで言えなかったんだろう』と後悔するような歌詞も多くて。この小説で描かれている“死んだときに後悔しないために、生きている間に伝えることが大事”というテーマと少し重なりますよね。『変わらないもの』という曲を作ったとき、『世の中に変わらないものって過去しかないんじゃないか』と思ったんです。世の中も人間も物だって、過去以外は全部が変わりゆくもので、でもそれこそが生きているってことじゃないですか。人間はみんな死に向かっていくからこそ、大切にしたい変わらない想いが誰にでもあって、そして、それは思っているだけじゃなくて伝えないとだめなんだなと、改めてこの本に教えてもらった気がします」

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 そして奥華子には、もう一つ“伝えることの大切さ”を感じた瞬間があったという。コロナ禍に突入した2020年から活動を一時休止し、今年9月30日には久しぶりの配信ライブを予定していたが、体調不良のため中止を決断。奥自身はファンから「怒られても仕方がない」と思っていたようだが、彼女の元に寄せられたのは「待っています」「身体を一番大切にしてください」というたくさんのあたたかいメッセージだった。

「あのメッセージを読んでいたら、なんかもう本当に涙が出てきて……。2年半も休んでいて、やっとライブをしようと決めたのに、また中止になってしまった。申し訳ない気持ちでいっぱいでした。それなのに、みんなは自分の気持ちを一つ一つ言葉にして伝えてくれた。それがすごく嬉しかったんです。『なんでこんな言葉にして伝えてくれるんだろう』『自分は誰かを励ますときにこんな風に言葉をかけられるだろうか』と思いましたね。ここまで話してきたことにも繋がることですが、やっぱり伝えることってすごく大切ですよね。私も言葉にして、伝えられる人になりたいと思います」


■書籍情報
『さよならの向う側』
小説:清水晴木
イラスト:いとうあつき
発売日:2021年6月18日
価格:1,650円

『さよならの向う側 i love you』
小説:清水晴木
イラスト:いとうあつき
発売日:2022年5月20日
価格:1,870円

【『さよならの向う側』作品特設サイト】
https://kotonohabunko.jp/special/sayonara/

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