『耳をすませば』お父さん役を演じた 無類の本と猫好きだった知の巨人とは?

『耳をすませば』お父さん役を演じた知の巨人は誰?

 スタジオジブリの青春アニメ映画『耳をすませば』が8月26日、日本テレビ系『金曜ロードショー』(毎週金曜 後9:00)で3週連続の最終回として放送される。本好きの月島雫とヴァイオリン職人を目指す天沢聖司が出会い、心惹かれ合いながら、青春時代特有の悩みと葛藤しながら成長していく物語だ。このアニメで重要な役割を演じるキャラクターの一人が、雫のお父さんだ。図書館に勤務する父は、少なからず雫の趣味嗜好に影響を与えている存在といえる。

 スタジオジブリ作品に登場するお父さんといえば、著名人の個性的な声も魅力のひとつだ。『となりのトトロ』のサツキとメイの父はコピーライターの糸井重里が演じている。では、『耳をすませば』の雫の父を演じた人は誰か、ご存じだろうか。

ノンフィクション作家、ジャーナリストの立花隆である。

 立花といえば『文藝春秋』に発表した「田中角栄研究〜その金脈と人脈」が、田中角栄首相を退陣に追い込むきっかけを作ったことで大きな話題になった。

 

 以後、令和3年(2021)に亡くなるまで、政治、科学、医学、さらには臨死体験に至るまで幅広い分野の本を執筆し、「知の巨人」として知られた。なお、現在は知の巨人といえば作家の佐藤優を指すことが多いが、当時は立花の代名詞であった。

 立花の本好きは特に有名で、『ぼくはこんな本を読んできた』など読書や書評に関する本も多数執筆している。

 また、本を一冊書き上げたり、科学者にインタビューをするにあたっては徹底的に資料を調べ上げ、神保町の古本屋に通って古書を買い漁ることも多かった。

 東京・小石川にある立花の事務所ビルは、階段まで蔵書があふれ、置くスペースが足りなくなるほど本に囲まれた生活を送っていた。一説によれば、その蔵書数は10万冊ともいわれている。立花自身の写真も本棚に囲まれた仕事場で撮影される機会が多く、まさに雫の父そのもののような雰囲気だった。

 立花は無類の猫好きとしても有名だ。前出の事務所ビルの壁面には巨大な黒猫の絵が描かれ、「猫ビル」という愛称があった。絵の作者は画家の島倉二千六である。ちなみに、『耳をすませば』にも、黒猫ではないし体型もまったく異なるのだが、ムーンという猫が登場する。

 雫はムーンを追いかけていくうちに、古道具屋「地球屋」にたどり着く。立花の猫ビルも、小石川の閑静な住宅街を散歩していると、突如出現する。巨大な猫の絵を前にすると、まるで異世界に迷い込んだような雰囲気を醸し出していた。

 こうして見ると、『耳をすませば』の世界観は、どこか立花の嗜好に通じるものがある気がする。そもそも、本好き、読書好きなら、『耳をすませば』のような世界観に一度はあこがれるのではないだろうか。そして、あんな甘酸っぱい恋愛をしてみたい。映画を見て、そう感じた本好きは少なくないはずだ。

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