『鋼の錬金術師』荒川弘の新連載は期待を裏切らない面白さ! 『黄泉のツガイ』の巧みな展開

『ハガレン』荒川弘の新連載が面白い

 これは下手な漫画家が描くと分かりづらい話となり、読者を置いてけぼりにしてしまうリスキーな描き方だ。しかし、荒川弘の手で描かれると、とても面白く、逆にわからないからこそ物語の中にグイグイと引き込まれる。これが成立するのは、ユルを筆頭とする各登場人物の心情が丁寧に描かれているからだろう。

 だからこそ本作は、背後の謎やバトルの説明が少なくても漫画として楽しめるし、繰り返し読めば何が起きているのかも理解できる作りとなっている。『ハガレン』の荒川弘ならではの、巧みさである。

 最後に、本作はツガイを筆頭とする“対”となる存在が、多く登場する。夜と昼を別つと言われる双子と言われるユルとアサ、村と下界、そして、あらゆるものを強制的に「とく」ことができる「解」(かい)の力と、あらゆるものを強制的に「とじる」事ができる「封」(ふう)の力。善と悪、本物と偽物、光と闇といったテーマも、これから描かれるのかもしれない。

 「ツガイ」は『ハガレン』における「錬金術」や「ホムンクルス」のような作品全体を象徴する怪物であり異能力だが、今後は「対」という概念自体が「等価交換」のような重要なキーワードとなっていくのだろう。「対」を軸に荒川は何を描こうとしているのか? 続きが楽しみである。

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