『琥珀の夢で酔いましょう』クラフトビールは心を開く鍵のよう 大人たちを無理なく自然と繋いでいく
村野真朱原作、依田温作画の作品『琥珀の夢で酔いましょう』。現在、月刊コミックガーデンにて連載中だ。
舞台は京都。主人公は広告代理店で派遣社員として働く剣崎七菜。大手航空会社のCMに自分の企画が通ったものの、やっかむ正社員から陰口を言われて苛立ちを抱える。
ひとりで飲んで、うさを晴らしたい――。
そんなときに出会ったのが路地裏にあるおばんざいのお店「白熊」。
そこは物腰柔らかなマスターと、ちょっと感じの悪い男性客だけ。
虫の居所が悪かった七菜はつい、店に対する不満を口にしてしまう。しかし、店主の野波が出してくれたおばんざいとクラフトビールはとてもおいしくて……。
夢中になっていく七菜と男性客……カメラマンの芦刈に、野波は名案を思い付く。
それは、全く経営がうまくいっていない(というより客が来ない)「白熊」のアドバイザーを依頼することだった。
嗚呼、クラフトビールが飲みたい。
おばんざいのお店だった白熊だが、七菜たちのアドバイスでクラフト専門店として再スタートを切る。
ビールが苦手だったという七菜は、野波の影響ですっかりクラフトビール好きに。
「とりあえず生(ビール)で!」というのはよく見る光景だが、好き嫌いが分かれるところだ。苦みばかりが勝ってしまっておいしくない、とか、すぐにおなかがいっぱいになってしまう、とか。暑い日にキンキンに冷えたビールは最高なのだが、みんながみんな楽しめるとも限らないのだ。
そんなビールが苦手な人でも楽しめるのがクラフトビールだ。味は千差万別。使っている小麦やスパイスが違うと全く異なるビールが生まれる(ちゃんと1巻で「ビールとはなんぞや」が説明されているのがありがたい)。
そして、クラフトビールの魅力だけではなく、さまざまな料理とのペアリングが描かれている。おばんざいはもちろん、スイーツとのペアリングには驚くばかりだ。
ビールと○○の料理は合わない……と思っていたものも、クラフトビールの種類を選べば、問題はない。問題がないどころか、ビールと料理のおいしさを倍増させてくれる。作品を読んでいて思うのは、「クラフトビールが飲みたい」ばかりである……。