【漫画】漫画家が甥っ子を主人公にしない理由に涙……『無いものねだりのヒーロー』に感じる夏の郷愁

「読者が好きなように捉えられる作品にしたい」

――現在の制作状況を教えてください。

もりとおる(以下、もり):現在は漫画制作を本業にしています。漫画は高校時代から本格的に描き始めました。その後は就職して長らく会社員をしながら趣味で同人活動を行っていました。

――本業漫画家になった背景は?

もり:「この生活をずっと続けていくのか~」とふと思った時、「好きなことにもっと時間を充てながら生活していきたい」と感じて退職し、漫画を本業にしていくことにしました。

――短編ながら強い印象を残す、『無いものねだりのヒーロー』制作のキッカケを教えてください。

もり:本作は本業の息抜きとして描きました。そのため、頭を絞りに絞って制作されたわけではなく、新幹線に乗っている時にふと浮かびました。キッカケは特に思い出せませんが、身のまわりの人から子どもに関する話をよく聞いていたことが影響したのかもしれません。

――わずか10ページではありますが、登場人物の悲哀が見事に表現されていましたね。

もり:もともと短編が浮かびやすく、今回の話は浮かんだ時点で1から10まで決まっていました。特に「短く簡潔にまとめよう」と意識はしませんでした。ただ、余白が多い作品が好きなので、基本は会話だけで説明はできるだけ省き、「読者が好きなように捉えられる作品にしたいな」と思って描きました。

大人と子供に感情の差はない

――テレビで時代劇を見ていたり、扇風機があったり、夏らしさを感じる描写も印象的でした。夏らしさを表現するために意識したことはありますか?

もり:夕方に帰ると『水戸黄門』をつけてくれる祖母の家の風景をそのまま描きました。また、“古い扇風機をずっと使っている“という祖母の家の景色を思い浮かべると、いつも夏休みを思い出すため、「分かりやすいかな」と考えて背景として描いています。

――こーちゃんと少年のどちらにも感情移入できました。

もり:私は大人と子供で感情の差はないと思っています。アプローチや発散のさせ方が違うだけで、大人でも子供でも同じように何かに憧れたり、他者からの評価に傷ついたりします。そういった心の機微を「言葉として出すのか?」「表情だけなのか?」など、どう画面に落とし込むか、ということを強く意識しました。

――最後に今後はどのような作品を描いていきたいですか?

もり:こういった創作漫画は今後も息抜きで描いていこうと思っています。どう受け取ったかを眺めるのが楽しいので、色んな方の目に留まる作品を描けたらと考えています。

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