『トライガン』新アニメ登場で振り返る、ガンアクションが凄かった「ヤングキングアワーズ」連載漫画

ガンアクションが凄かった「ヤングキングアワーズ」作品

 『トライガン』のアニメ化発表で沸く原作ファンたちには、内藤泰弘の原作が『トライガン・マキシマム』として「ヤングキングアワーズ」に連載されていた頃を、硝煙の匂いと共に思い出す人も少なくないだろう。平野耕太『HELLSING』、そして伊藤明弘『ジオブリーダーズ』という漫画史に残るガンアクションを見せてくれた作品が、揃って連載されていたからだ。

 『トライガン』シリーズが2023年にアニメ化される。凄まじいガンアクションとパワフルなバトルが、連載途中だったため独自展開となった1998年のTV版、パラレルワールドという設定の2010年の劇場版に続いて映像で見られるとあって、昔からのファンも『血界戦線』で内藤泰弘を知った人も、今から期待に胸をふくらませている。

 前のTVアニメはマッドハウスの制作で、荒々しさとコミカルさを合わせ持った原作のテイストがしっかりと引き出されていた。今回の『TRIGUN STAMPEDE』は3DCGアニメーションが得意なオレンジが手がける。どのようなルックになるのか、小野坂昌也が演じた主人公のヴァッシュ・ザ・スタンピードや、速水奨が演じたニコラス・D・ウルフウッドの声は誰になるかといった推測も盛んだ。

 『トライガン』の舞台は、荒涼とした大地が続くどこかの惑星。人々は各地に点在した「プラント」と呼ばれる装置が出すエネルギーを拠り所にして暮らしている。「プラント」は無尽蔵ではなく、現実世界のエネルギー争いと同様に騒動が起こり、貧富の差も生まれていた。銃器で武装した荒くれ者たちが暴れては、お尋ね者となる場合もあった。

 その中で、600億$$(ダブドル)という破格の償金がかけられた男こそがヴァシュ・ザ・スタンピード。どれほど恐ろしい奴かといえば、「少年キャプテン」に連載された『トライガン』シリーズに早々に登場するヴァッシュは、笑顔を絶やさずとても優しげで、賞金稼ぎが襲ってきても人殺しは嫌だと銃を抜こうとしない。

 そんな男がどうして高額の賞金首になったのかは、物語の中で次第に開かされていくが、銃は決して下手ではなく、追っ手が放った弾を自分の銃から発射した弾丸を当ててそらすほどの凄まじさ。次々に現れる刺客を相手にした展開でも、腕からバルカン砲を放ったり、瞬時に移動して襲ってきたりする怪物たちを相手に勝利を重ねていく。西部劇では考えられない特殊な造形の銃器や武器によるバトルアクションを堪能できる作品だ。

 1998年から「ヤングキングアワーズ」に移って『トライガン・マキシマム』として再会された連載で、物語は舞台となっている惑星の成り立ちや、ヴァッシュの出生の秘密などが明らかとなって、SFとしての面白さも浮かんでくる。そうしたストーリーや、強大な刺客たちが連載そのままに映像化されれば、クライマックスのスペクタクルへと向かってどこまでもエスカレートしていく物語を目の当たりにできるだろう。

 原作漫画どおりのアニメ化が求められるのは、平野耕太『HELLSING』がそれで面白さを再確認されたからだ。英国を異端の化物から守る組織「ヘルシング機関」には、長を務めるヘルシング家の当主、インテグラの下にアーカードという名の吸血鬼が仕えていて、事件が起これば出向いていって化物を狩っていた。武器は手にした2挺の拳銃で、普通の銃器では倒れない相手でも撃ち抜き粉砕して倒していく。

 強さに加えて傍若無人で傲岸不遜な態度がアーカードの魅力。最初のエピソードで事件に巻き込まれ、人質になった女性警察官のセラス・ヴィクトリアごと犯人を撃ち抜いて冷酷無比な化物かと思わせて、吸血鬼として再生させるあたりは優しさか、それとも気まぐれか。以後、アーカードとセラスのコンビを中心に、襲ってくるバチカンの刺客やナチスの残党らを相手に、血まみれのバトルが繰り広げられていく。

 2001年にTVアニメ化された時は連載途中だったため独自展開となった。2006年からOVAによる再アニメ化が始まり、2009年の漫画連載終了を挟んで2012年まで、全10巻完結した。少佐による「諸君、私は戦争が好きだ」から始まる長い演説もしっかりと収録されたOVAは世界でも大人気に。こうした実例もあるだけに、『トライガン』の改めてのアニメ化にも期待したくなる。

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