歌人・川野芽生による初の小説集『無垢なる花たちのためのユートピア』刊行

「Lilith」30首で第29回歌壇賞を受賞し、第一歌集『Lilith』で第65回現代歌人協会賞を受賞するなど、今もっとも注目を集める歌人・川野芽生による初の小説集『無垢なる花たちのためのユートピア』が東京創元社より刊行された。

 書き下ろし2編を含む6編の小説が収録された今作は、歌人でもある著者が紡ぐ言葉により創り出された物語の強さ、読者を引き込む世界構築の美しさが大きな魅力に。

 楽園へ向かう船での親友の死に秘められた謎を描いた表題作のほか、ひとが人形に変化する奇病が蔓延した村、機械の身体を持つと男と植物に身を覆われた少女との出会いなど、今作には川野芽生だからこそ描ける幻想文学の世界が広がっている。

■内容紹介:
 地上からはるか遠く離れたところにあるという楽園を目指し、天空を旅する一隻の船。そこでは花の名前をつけられた少年たちが、導師と呼ばれる大人たちのもとで寮生活を送っていた。最も大切なのは心の純潔さであると教えられた少年たちの暮らしは慎ましく清らかで、船の中はこの世界のどこよりも楽園に近い場所と思われた。ある日、白菫という少年が舷から墜落する。皆が不慮の事故としてその死を悼んだが、親友の矢車菊は白菫が落ちる直前の様子を知り、彼がみずから身を投げたのではないかと疑問を持つ。だが、希望に満ち溢れたこの美しい船に、いったいどんな不幸があるというのか――親友の死のほんとうの理由を探して、矢車菊は船内の暗い場所へと足を踏み入れる。

【著者・川野芽生から読者に向けて】
 作者の言葉なんかより、作品そのものの言葉の方がずっと遠くまで届くと思っているので、あらためて何を言ったらいいかわからなくなってしまうのですが……。

 あなたにとってこれらの作品がかけがえのないものになるとしたら、その出会いは作品にとってもかけがえのない、世界でただひとつのもので、世界でたったひとりのあなたに出会えることを作品は待ち望んでいます。と、作品が言っています。あ、手を振ってますね。見えますか? (『紙魚の手帖』Vol.05内インタビューより)

http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488028589

■著者プロフィール
川野芽生(かわのめぐみ)
1991年神奈川県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科在学中。2017年、「海神虜囚抄」(〈間際眠子〉名義)で第3回創元ファンタジイ新人賞の最終候補に選出される。18年、「Lilith」30首で第29回歌壇賞を受賞し、20年に第一歌集『Lilith』を上梓。同書は21年、第65回現代歌人協会賞を受賞した。
 
■書誌情報
『無垢なる花たちのためのユートピア』
著者:川野芽生
判型:四六判上製
ページ数:336ページ
価格:1870円(税込)
ISBN:978-4-488-02858-9
Cコード:C0093
装画:山田緑
装幀:柳川貴代
出版社:東京創元社

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