『きのう何食べた?』『ひらやすみ』『A子さんの恋人』……阿佐ヶ谷が舞台になった個性的な漫画たち
ミニシアターや個性的な居酒屋、ノスタルジックな古本屋が立ち並び、文化の香りが漂う「阿佐ヶ谷」。JR中央総武線が通る阿佐ヶ谷は高円寺と荻窪の中間に位置しており、学生の姿も多く見かける街だ。
様々なカルチャーが生まれてきた街として知られており、小説や漫画の舞台となることも多い。本稿ではそんな阿佐ヶ谷を舞台として描かれる漫画の一部を紹介したい。
『きのう何食べた?』
2007年から「モーニング」(講談社)で長期連載を続けている『きのう何食べた?』。2019年にTVドラマとして放送された作品であり、2021年11月には『劇場版「きのう何食べた?」』が公開された。
倹約家であり栄養価のバランスがとれた料理をつくることを楽しみとする弁護士・筧史朗(シロさん)と、人当たりが良くおしとやかな一面ももつ美容師・矢吹賢二(ケンジ)のふたりはゲイのカップルとして同棲している。シロさんが中心となって手掛ける料理と共に、共に人生を歩むふたりの日々が描かれる漫画だ。
シロさんが食料品を購入するために通うスーパーをはじめとするお店の数々から、本作の舞台は阿佐ヶ谷だとされており、阿佐ヶ谷を代表する商店街として有名な「阿佐ヶ谷パールセンター」も描かれている(ドラマでは新小岩などの街で撮影はされていた)。
手描きのポップに書かれた値段に一喜一憂しながら買い物をするシロさんの姿は、阿佐ヶ谷での日常を垣間見させてくれる。
『ひらやすみ』
「マンガ大賞2022」第3位に選ばれた『ひらやすみ』も阿佐ヶ谷が舞台となっている作品であり、阿佐ヶ谷姉妹をはじめとする多くの著名人が推薦コメントを寄せたことでも話題となった漫画である。
知り合ったおばあちゃんから受け継いだ平屋で暮らす29歳フリーター・生田ヒロト。大学進学のため山形県から上京し、いとこであるヒロトの平屋で暮らすこととなった美大生・小林なつみ。ふたりを中心に個性豊かな登場人物が過ごす日常の様子が描かれる。
本作では『きのう何食べた?』でも描かれた阿佐ヶ谷パールセンターが多く登場しており、2巻「14日目/阿佐ヶ谷七夕祭りの乱!後編」では1954年から始まったお祭り「阿佐ヶ谷七夕まつり」の様子も描かれた。お祭りでは商店街に様々な人が手掛ける手作りの“張りぼて”が飾られ、作中でも装飾された商店街の様子を目にすることができる。
またヒロトのアルバイト先である釣り堀も阿佐ヶ谷に実在する「寿ヶ木園」がモデルとなっていることが明かされており、アルバイト中のヒロトが描かれるシーンは、同園を知る人にとってなじみ深いものであろう。