『やんごとなき一族』原作との違いは? アフターシンデレラストーリーの見どころを考察

『やんごとなき一族』を読む

 2022年春ドラマの期待値調査にて1位にランクインした『やんごとなき一族』(参考:<2022年春ドラマ>期待値ランキング(1~2位)|ランキングー!)。ドラマの第1話が4月21日(木)に放送された本作は、こやまゆかり氏が手掛ける同名漫画が原作となっている。

 平凡な主婦が夫の浮気を機にプロモデルを目指す『バラ色の聖戦』や、浮気によって夫婦の関係が揺らぐ様子を描いた『ホリデイラブ 〜夫婦間恋愛〜』など、これまでもこやま氏の手掛けた漫画はドラマ化されてきた。女性の視点から作品を生み出してきたこやま氏が贈る本作の魅力とは。

“アフターシンデレラストーリー”

 物語の主人公は母親とふたりで大衆食堂を営む篠原佐都。第1話「止ん事無い事情」にて彼女は交際していた深山健太からプロポーズを受ける。婚約のあいさつをするため健太の実家を訪れた佐都は、健太が不動産事業を手掛け莫大な資産を有する一族「深山家」の次男であることを知る。

 健太の父親である深山圭一は佐都との婚約に反対するとともに、家族に嫌悪感を抱き実家を離れた健太を深山家の跡継ぎにさせることを考えていた。健太との結婚を深山家に認めてもらうこと、そして健太が深山家の一族と良好な関係を築けるように、佐都が深山家と交流する様子が描かれる。

 ドラマにて用いられたのは“アフターシンデレラストーリー”というキャッチコピーである。社会階級をつよく意識する深山家の存在や、深山家の一族と佐都にある経済的な格差など、本作は童話「シンデレラ」を彷彿とさせる。玉の輿とも捉えられる結婚から物語が展開される点はまさしく”アフター”シンデレラといえるだろう。

 童話「シンデレラ」と同様に、主人公である佐都は深山家の一族から様々な嫌がらせを受けることとなる。たしかに突如として上流階級の一員となり、跡継ぎ夫婦の座についた佐都が、深山家にとってポジティブに捉えるのがむずかしい存在であることは想像に難くない。

 また深山家はヒエラルキーに則った明確な上下関係が存在するため、軽蔑する態度や嫉妬の感情が生まれやすい環境となっているのだろう。現に「第3話 圭一のスピーチ」では深山家の一族が互いにフラストレーションをぶつけ合う様子が描かれる。そんな深山家の一族が抱く怒りの矛先は佐都へ向いてしまい、彼女は様々なかたちで感情をぶつけられることとなってしまうのだ。

 不遇ともいえる境遇の佐都であるが、童話「シンデレラ」と同じく佐都の味方となる人物も存在する。それぞれに欲望や思いが存在する深山家において、この人物は佐都の敵となる存在なのか、もしくは味方になりうる人物なのかーー。真意を隠した登場人物たちが優雅にふるまう様子から覚えるハラハラ感、そしてときに見られる人の優しさから大きな安心感を覚える作品であろう。

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