【漫画】おじいさんの秘密とは? Twitter漫画『さかのぼる庭』が泣ける
ーーおじいさんの目にする幻想的な風景に美しさを感じました。記憶をさかのぼるおじいさんを描いた背景や思いを教えてください。
Tom:小学生の頃に曽祖母のお見舞いに行ったことがあるのですが、そのとき曽祖母が私の父に対して「孫が生まれたかね」と嬉しそうに聞いていたのが妙に印象的でした。あれが聞き間違いだったのか、曽祖母の目には本当に私の父が私の祖父に見えていたのか、今ではよく分かりません。ただ当時のことを時々思い出します。
おそらく誰も覚えていない出来事だと思いますが、あのとき本人に見えていた風景が幸せなものだったなら良いなとぼんやり思っていました。そういった願望をひとつの作品に落とし込みながら、定期的に思い出す話に「めでたしめでたし」と一区切りつけたかったのかもしれません。
ーー様々な花々が咲く庭を描くなかで意識した点は?
Tom:春先に咲く花も秋頃の花も、本当だったら夏の日差しなんて浴びることはほとんどないだろうなと思いつつ、なるべく夏っぽい光加減になるように意識しました。庭の景色が映される様子は夢を見ているような状況なので、ちぐはぐな庭に見えていたら嬉しいです。
ーー本作を執筆するなかで印象に残っているシーンを教えてください。
Tom:おじいさんに「大きくなったんだなぁ」と言われた洋介がその言葉を軽く笑い飛ばすシーンです。少し会話が噛み合っていないことに気づきつつ、それを咎めることなく流すのは彼なりの優しさなんじゃないかと思います。
ーー本作は過去に描いた作品だと伺いました。本作をリメイクしようと思ったきっかけは?
Tom:本作は私が初めて完成まで描いた漫画でとても思い入れのある作品でした。当時は何かと忙しく「ちゃんと完成させなきゃ1ヶ月後も、1年後も『あのとき完成させていたら』と後悔し続けるだろうな」と大慌てで仕上げたもので、絵もかなり雑になってしまっていました。
思い入れがありつつも自分の作品に対して誠意がなかったと感じ、ずっと心残りになっていたことから今の自分ができる範囲で丁寧に描き直そうと思いました。作品に対して使う言葉ではないかもしれませんが、ちょっとした子離れがしたかったんだと思います。
ーー過去の作品を再び描くなかで感じた心情や発見がありましたか?
Tom:自分の作品を丁寧に眺めることができる良い機会だったと思います。過去の自分も今の自分も「読んだ後にちょっとご機嫌になってもらえたらいいな」とか「何気ない一言が誰かに響いたらいいな」と考えながら作品を描いていたので、創作をする上での方向性はずっと地続きで変わっていないと思いました。
ーーイラストや漫画作品を描き始めたきっかけを教えてください。
Tom:元々空想をするのが好きな子ども時代を過ごしていて、最初は小説を書くのが好きでした。ただ同じくらい絵を描くのも好きだったので、ちょうど真ん中に落ち着いて漫画を描くようになりました。
自分の中の空想を一番良い形に落とし込めるのであれば、文章でも絵でも漫画でも構いません。何かが色々違ったら今回の作品も漫画ではなく小説など他の形を取っていたかもしれません。
ーー今後の目標について教えてください。
Tom:当面の間はコンスタントに作品を作れるようにしていきたいです。また自分の技量のために表現の幅が狭まるのは勿体無いなぁとは思い、ちゃんと絵の勉強をしたいなと思っています。
ジャンルや作風を決めているわけではないのですが、登場人物一人一人の発する言葉や起こす行動に、本人の今までや人間関係などの積み重ねを含ませられるような作品を作ることができたらいいなと思います。