テリーマン、雷電、アントニオ猪木……漫画における「名解説者」の条件とは?
「むうっ、あれは世に聞く……」からの「知っているのか雷電 !?」の流れは、令和の時代のいまになっても語り継がれるキラーフレーズとして有名である。伊達臣人に従う三面拳の一人であり、中国拳法最古の歴史を持つ大往生流殺体術の使い手である雷電は、そのバックボーンゆえ、ありとあらゆる武術に精通していることに何の違和感もない。「刃牙」シリーズで烈海王が長らくそのポジションを務めてきたのと同じ理由である。
しかし雷電の解説には、もう一つ忘れてはいけない重要なファクターがある。そう、「民明書房」の存在である。上記のキラーフレーズのあと、雷電が解説をすると、それを裏付けるかのように文献からの引用が一コマ入る。その最後に書かれる書名と「民明書房・刊」の文字。そう、『プロレススーパースター列伝』の「アントニオ猪木(談)」に勝るとも劣らない強烈なインパクトと説得力を与え、その結果、一定数の読者が、民明書房が実在する出版社だと(ある時期まで)信じて疑わなかったのだ。
馬場と猪木の解説スタイルのいいとこ取りのような雷電→民明書房・刊のコンボは、格闘漫画の解説の最高峰であると言えよう。
その後も先述した烈海王や、同じく「刃牙」シリーズであまたの武芸を修めた本部以蔵など、解説者の系譜を継承する人材もコンスタントに出てきているが、ここはひとつ、いまだ解説者として現役のテリーマンや、雷電のインパクトを越える新たな解説者の登場に期待したい。そして、我々読者を虚実入り混じったエンターテインメントの世界に没入させてほしいと願う。