桑島智輝が語る、商業写真としてのグラビア 「“仕事”という前提で、いかに自分らしい色を出せるか」
『月刊』シリーズを振り返る
――本作は『月刊』シリーズとしてのリリースになります。せっかくなので、『月刊』シリーズについてのお話も伺いたいのですが、桑島さんが特に影響を受けた一冊はどれになりますか?
桑島:『月刊 松金洋子』。これは、僕が初めて買った『月刊』シリーズの作品です。当時、コンビニに並んでいた『月刊 松金洋子』の表紙を見て、すげぇいい写真だなって。それで買ってみたんですよね。セクシーさに惹かれたというよりは、ちょっとよく分からない世界観がものすごく新鮮で。今まで雑誌で見てきたグラビアとは、雰囲気が違う感じがしたんですよね。ポップな構成も面白いし。
――見させていただくと、全部ジムの室内だけで撮られているっぽいですよね。
桑島:そうそう。今見てもスゴいですよね、コレ(笑)。ポップなようで、表情もフォルムもしっかり押さえられていて、撮るべきところはちゃんと撮っているんですよ。カメラマンは藤代冥砂さん。もう、衝撃的でしたよ。この一冊から『月刊』シリーズの面白さを知って、いろいろとチェックするようになりましたね。
あと『月刊加護亜依super remix』。先に出していた『月刊加護亜依』が好評だったから、追加カットを収録して発売された一作で、とにかくインパクトが凄かったのを覚えています。それとは別で『密着 加護亜依』ってメイキングDVDも出ていて。カメラマンの笠井爾示さんが何のカメラを使って撮っているのか、いちいち映像を止めて研究していました(笑)。
――そうだったんですね(笑)。
桑島:ただ影響を受けたでいうと、篠山紀信さんの存在も欠かせませんね。『SPA!』(扶桑社)で連載されていた「エッジな人々」。毎回、女優さんやアーティストさんなど、そのとき話題になっている人に取材をして、撮り下ろしをするんです。水着で撮ることもたまにはあったのかな?でも、基本的には洋服を着ているグラビアで。その写真がめちゃくちゃ好きでしたね。
篠山さんって、いわゆるパブリックイメージから少しズラした写真を撮られる方だから、ポートレートとして本当に最高なんですよね。水着であるなし関係なく、被写体がカメラの前で開放的になっているのが伝わってくるんですよ。無表情だったり、カメラ目線じゃない写真が4ページ続いたりしても、ちゃんとポートレートとして成立しているんです。
――グラビアや写真の話をしていると、業界の巨匠として篠山さんの名前は頻繁に挙がります。批評もたくさん出ていますけど、今一度、改めて篠山さんの作品を見返すべきかもしれませんよね。写真に籠るエネルギーの凄まじさは半端じゃないですし。
桑島:結構、めちゃくちゃなことをやっているんですよね(笑)。広角レンズの使い方が異常だったり、不思議なレフの当て方をしていたり。わざと写真を壊しにかかっている部分があるんですけど、それだけやってもなお、写真としてうまく成立しているのが篠山さんのすごいところ。「あ、ここまでやっていいんだ」っていう。実際、その影響はかなり受けていて、今回の奥山さんの写真集でも、銀レフを使ってギャンギャンの光を当てる手法を多用しているんですよ。
――本作で自由な挑戦ができたのも、かつて飛び抜けたグラビア写真集を量産してきた『月刊』シリーズだったからとも言えそうですね。
桑島:そうですね。今、挑戦を許してくれる現場が本当に少ないんですよ。致し方ない事情もあるでしょうけど、それでもカメラマンの立場からすると、挑戦する気概を無くしてはいけないと思っています。ですから、本作でいろいろ挑戦させていただけたのは、僕にとってもいい機会になりました。いい写真集に仕上がった自負もあるので、またご覧になっていない方にも、ぜひ見ていただきたいですね。