身を潜めていた自分の”欲望“がこっそりと顔を出す!? 『欲望屋アンダーグラウンド』の魅力

『欲望屋アンダーグラウンド』の魅力

こじらせていた自分の性質に気づく

 自分の性癖(性格の癖や偏り)ってなんだろうとこれまでぼんやり思っていたが、この作品で唐突に気づくことになった。そのひとつは、睡眠薬入りのお酒を飲まされて気分が悪くなっている凪を、犬飼が介抱するシーンでのことだ。犬飼がスーツのジャケットを脱ぎ、ネクタイを肩にかけ、凪の口に手を突っ込む。顎を持ちあげ、バケツに何度か吐かせる。「もっと口開けて?」と顔を近づける。なんだ……これ……吐かせているだけで、こんなに色気を感じることってある……!?

 続けて筆者の趣味になるかもしれないが、クール系の黒髪男性キャラが好きである。伏し目がちな目元とか、やや横顔の鼻から口、喉仏、胸鎖乳突筋のラインはずっと眺めていられる。涙ぼくろと黒髪、赤目(赤眼)、スーツの組み合わせもやばい、あと眼帯……あれ? これもう犬飼そのものじゃん。張り付けたような笑顔、時折見せる目が真っ暗で怖い、でも怖いもの見たさからか見てしまう……。

 本作には他にも黒髪イケメンがいる。ビルのオーナーと付き合っているヤンキー気質だけど漢気溢れる黒田、黒ミサ喫茶を営む超絶美魔王と自称するサタンくんもそうだ。特に第46話からはサタンくんの過去話が出てくるが、犬飼に詰め寄られて心と言葉、表情がうらはらになってしまうくらい本音をさらけ出してしまうところは個人的に好きなシーンのひとつだ。苦しくてしんどいのに口元は笑っているとか、どろどろの感情が溢れて余裕がない泣き顔とか刺さりまくる。あと関西弁な、反則。思わず自分の性癖や欲望が溢れ出してくる。人の欲望って奥が深くて、おもしろい。

「好きな男の鎖骨に住みたい」作者のあとがきも必見

 GANMA!でみられる作者のあとがきも面白い。作者の日常生活を垣間見ることができる。本編でのシリアスな展開のあとに、「やっぴー!」「いぇいいぇい!」みたいな脈絡ガン無視のあとがきがあると、コーヒーを噴きそうになる。だけど好き。「好きな男の鎖骨に住みたい」「なんで耳食べとんねん、さすがにひかれる!でも描いちゃう!」と、一番欲望に正直なのは作者ではないのかとさえ思う。読者としてその姿をみられるのは嬉しい。

 本編でもあとがきでも、こうした趣味嗜好に刺さりまくる箇所がたくさんあるので、出血多量覚悟で読んでみてほしい。

■書誌情報
『欲望屋アンダーグラウンド』1~4巻(電子書籍)
作者:青木ぶる
出版社:GANMA!

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