『ガラスの仮面』実力はあるのに! マヤのライバルになりそこねた人物3選
※本稿は『ガラスの仮面』の内容に触れている箇所がございます。未読の方はご注意ください。
未完の大長編漫画『ガラスの仮面』(美内すずえ)の主人公・北島マヤは、天才的な演技の才能を持つ少女である。マヤの宿命のライバルと言えば「演劇界のサラブレッド」とも呼ばれる姫川亜弓で、血のにじむ努力でマヤと共に伝説の演目『紅天女』の主演候補になった。
『ガラスの仮面』には、他にも演技力に長けた少女たちが登場する。亜弓がいない『ガラスの仮面』は今や想像もできないが、もしそのような世界線があれば、誰がマヤの強敵となったのだろうか。選りすぐりの三人の若手女優を紹介する。
最初にマヤの役を奪おうとしたのは……水無月さやか
唯一紅天女を演じた元大女優・月影千草。マヤを指導する師匠でもある。彼女が立ち上げた劇団つきかげには、実力を買われ月影にスカウトされた役者が、マヤの他に四人いた。マヤ以外は演技の経験も豊富である。
その中のひとりが、マヤと同い年の水無月さやかだ。マヤが入団してすぐ『若草物語』の上演が決まった。メインは四人姉妹の役で、やさしい印象のさやかは三女のベス役にぴったりだった。しかしベス役に抜擢されたのは、演技経験がほとんどないマヤ。さやかはショックを受ける。
最初はベス役を奪おうと積極的に自分の演技力をアピールしていたさやかだったが、稽古をする中でマヤの類まれな才能をまのあたりにする。諦めて自分に与えられた役を頑張ろうと心を切り替えるのだ。
一時はこのまま悪役になるのではないかと思ったさやかだったが、現在は他の三人の役者と共にマヤの友人となり、共演したり稽古を手伝ったりして良好な関係を築いている。
迫真の演技でマヤを驚かせた……金谷英美
『奇跡の人』の上演に伴い、マヤと亜弓はオーディションを受けることになった。目指す役は少女時代のヘレン・ケラーである。このオーディションには二人以外も候補者がいた。その中のひとりが、マヤの通う学校の演劇部に所属する金谷英美である。
この演劇部は、高校演劇の大会でほぼ毎年優勝している。指導しているのも著名人だ。稽古を見たマヤは度肝を抜かれる。英美はマヤと同様に、演技をするとき以外は平凡に見える少女だ。しかしいざ自分の出番になると、表情や動きが一変する。マヤが彼女の稽古を見たとき、鬼気迫る演技で自分の役・鬼婆そのものになっていた。
オーディション前、各候補者はさまざまな形で稽古をする。英美は徹底的にヘレン・ケラーについて調べつくした。役になりきるには知識が必要で、得た知識から人物像を浮かび上がらせるというのが彼女の役作りの方法だった。
オーディション当日もヘレンを演じきり、それまで若手女優は亜弓しか褒めていなかった小野寺監督ですら絶賛する出来栄えだった。
しかし亜弓とマヤは努力と才能によって英美を越えた。負けた英美は、二人をライバルだと認識し、「いつか(マヤと亜弓の実力を)しのいでみせる」と決意して会場を去る。
英美は卑怯なところのない実力派の役者だった。再登場があるかどうかはわからないが、作品の外で今も女優として活躍しているのだろう。