電車内で男女が出会う、一見上手な漫画がプロ作家の添削で激変 重要なのは「読者を想定する」こと?
各種アプリやウェブサービス、SNS等の隆盛により“掲載”の場が増えたことで、多くのクリエイターが漫画を発表し、ウェブ発の人気作品も多く登場するようになった昨今。ネクストブレイクを狙う漫画家の卵に対し、作画や物語づくりの悩みに答え、実際に添削を行うプロ漫画家・イラストレーターの動画が人気を博している。
なかでも、丁寧かつ熱のこもった添削で高い人気を誇っているのが、元週刊少年漫画誌の連載作家「ペガサスハイド」氏だ。視聴者から寄せられた一見上手なイラストや漫画が、プロの目線で細かくチェックされ、本人の長所を生かしつつ、バージョンアップしていく様が痛快で、クリエイターを目指していない視聴者も楽しめる内容になっている。
9月12日に公開された動画では、「ある曲の歌詞をワンシーンにした」という漫画の1ページが取り上げられた。セリフに頼らず、絵だけでどれだけのことが伝えられるか、というテーマで描かれた作品で、素人目にはとても上手に見える。
ペガサスハイド氏は動画で常々、新人作家が陥りがちな、「セリフやナレーションに頼った表現」について再考を求めており、無声映画的に「絵」だけで勝負した本作を高評価。投稿者は、漫画は初挑戦だというが、イラストはよく描いているそうで、「画力もわるくない」とした。また、「真面目そうな女の子」から「電車内の風景」まで、何を描きたいかが明確に伝わる力もあると、投稿者の長所を分析していた。
ここからハイド氏は、「自分ならこう描く」と、いつものように元の原稿を生かしつつ、さらさらとネームを描いていく。一見して伝わるのは、「動き」がダイナミックになったところだ。元の原稿では、「ドアが閉まった電車の中に立っている青年」に見えていたところが、ハイド氏のネームでは「ギリギリ間に合った」感がプラスされ、躍動感が生まれている。「青年とヒロインがぶつかる」というシーンも、よりドラマチックに仕上がった。
また、元原稿には登場人物が青年とヒロインの二人しかいないが、ハイド氏はあえて、電車に乗り合わせた第三者が、焦っている青年を怪訝な表情で見つめる様子を描き込むことで、ヒロインの純粋さや優しさを際立たせている。「電車の中」という限られたシーンでも、「社会」が想像できているか。特に若い作家は、その世界に主人公たちしか存在しないかのような描き方をしてしまいがちだとして、ハイド氏は視野を広げることを勧めた。