ワノ国編は『ONE PIECE』終わりへの序章 物語はついに「ひとつなぎ」に

『ONE PIECE』ワノ国編で「ひとつなぎ」に

 尾田栄一郎の『ONE PIECE』は、1997年から「週刊少年ジャンプ」で連載されている人気長編漫画だ。本作は、「ひとつなぎの大秘宝」(ワンピース)を求めて海賊たちがしのぎを削る大海賊時代を舞台に、麦わらの一味を率いる少年・ルフィが海賊王を目指す冒険ファンタジーだ。

 海賊たちが大海原を舞台に大活躍するというビジュアルイメージが爽快なため、明るく楽しい王道少年漫画の代表として語られることが多い『ONE PIECE』だが、それはルフィたちの活躍を描いた入り口の部分であり、奥へ奥へと読み進めていくと作者が複雑かつ重厚な世界を描いていることに気付かされる。

 中でも第90巻から現在まで続いている「ワノ国編」は、これまで『ONE PIECE』が積み上げてきた物語の集大成となっており、過去・現在・未来がひとつにつながる最重要エピソードとなっている。

 以下、ネタバレあり。

 ワノ国の侍たちと同盟を組んだルフィたちは、国を支配する将軍・黒炭オロチと百獣のカイドウを倒すため、ワノ国へと上陸する。

 ワノ国は江戸時代の日本を思わせる島国の鎖国国だ。浮世絵風の絵柄が多用された世界観は、今まで『ONE PIECE』に登場した国の中でも異色のものとなっており、昔の外国人が想像するエキゾチックな日本を戯画化したような幻想的な世界となっている。しかしそこで描かれる権力に蹂躙される庶民の苦しむ姿は、今までで一番痛々しい。

 平和に見えた国家が実はディストピア社会だったという描写は今までにも繰り返し描かれてきたがワノ国の描写は、より辛辣でえげつないものとなっている。何より日本に近い世界が舞台ということもあってか他人事として読めない。中でショックだったのが、えびす町で元大名の霜月康イエが処刑される場面。支給された食料に混ぜられた人造悪魔の実「SMILE」の食べ残しの影響で笑うことしかできなくなった町人たちが、笑いながら泣く場面は、本編で最も残酷な場面である。

 楽しいファンタジーだと思っていると、物語の節々で国家権力による残酷な蹂躙が描かれることが『ONE PIECE』の持つ苦味だが、こういう辛いシーンを避けずに描くからこそ物語に深みが生まれる。

 圧政に耐える庶民の描写や、オロチとカイドウに立ち向かい敗れ去った光月おでんの哀しい顛末を一気に描ききった後、侍たちがルフィと共に鬼ヶ島へと「討ち入り」を決行する場面は『忠臣蔵』を筆頭とする日本人がもっとも好きな物語の型となっており、読んでいて気持ちが高まる。

 一方、気になるのが百獣のカイドウの思惑だ。



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